クトゥルフ神話TRPGとは|今、国内で一番遊ばれている人気のTRPGを紹介

今、TRPG界隈がデジタル技術とTRPGというコンテンツの相性が良いことから動画配信などを理由に、今また新たにTRPGの人口が増えつつあります。その動画の中でもクトゥルフ神話TRPGが多くあり、今の日本のTRPGを牽引するゲームとも言えます。動画でTRPGに興味を持った人にもわかりやすいようにクトゥルフ神話TRPGについて解説します。

クトゥルフ神話TRPGとは

クトゥルフ神話TRPGは今、日本国内において最大数のユーザーがいるTRPGのルールブックです。リプレイ動画やVtuberが体験したことで、その存在を多くに知られることとなったTRPGですが、そのリプレイが現代を舞台にしたものが多く、プレイヤーの分身である探索者も自分の好みを投影したものであったために、若い層に刺さり再び人気を獲得しています。ホラー小説として体系が出来上がった「クトゥルフ神話」の要素をふんだんに取り入れたTRPGであり、ホラージャンルとしては世界最高峰のTRPGと言えます。

根幹となるクトゥルフ神話

「クトゥルフ神話」はパルプ・マガジンの作家であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトと友人らの小説を元にした架空の神話で、20世紀にアメリカで創作された架空の神話です。太古の地球を支配していたが、現在は地上から姿を消している強大な力を持つ恐るべき異形の者ども(旧支配者)が現代に蘇ることを共通のテーマにしています。その旧支配者の一柱で太平洋の底で眠っているというタコやイカに似た頭部を持つ軟体動物を巨人にしたようなものとして「大いなるクトゥルフ:が有名であり、そのクトゥルフを中心に複数の作家で架空の地名や書物、神々の固有名詞などを共有して体系立てたものです。「クトゥルフ神話」に関連している小説のすべてで主人公はこの世のものではない理解し難い未知の存在と接することでこれまで感じたことがない恐怖を体験していきます。
クトゥルフ
出典:Rodney Kellyによる作品

SAN値(正気度)と狂気のルール

クトゥルフ神話TRPGを数多のTRPGと異なるものにしたものは「狂気のルール化」したことにあります。キャラクターが理解できなことや恐ろしい体験をすることでSAN値(正気度)を失い、酷い時は発狂してしまいます。このことにより肉体的な死亡によるプレイ終了とは別に精神崩壊によるプレイ終了も発生します。リプレイ動画では狂気に陥るものを怖いものではなく楽しむ要素として表現しており、SANチェックを行うことも楽しみの一つとなっています。

クトゥルフ神話関連のTRPGの歴史

歴史
クトゥルフ神話を扱ったTRPGの歴史は長く、最初はTRPG黎明期と呼ばれる1980年代に登場しております。日本ではカードゲームの登場によりTRPGのブームは下火になりましたが、2000年代に入りリプレイ動画などからその人気が再加熱、現在では日本で一番プレイされているTRPGと言われています。

クトゥルフの呼び声

もともとは『クトゥルフの呼び声』(クトゥルフのよびごえ、Call of Cthulhu)という名称で販売されており、アメリカのゲーム会社であるケイオシアム社が1981年に製作したものです。クトゥルフ神話の世界観とケイオシアム社のゲームシステムであるベーシックロールプレイング(BRP)により生み出されました。ファンタジーものやSFもの中心だったTRPG界に颯爽と登場したホラー・ジャンルの作品です。日本ではホビージャパンから販売されており、当時のTRPGの形式であったボックスタイプでした。今でもクトゥルフ神話TRPGを当時の略称であるCoCを使って表る人もいます。

コール・オブ・クトゥルフ d20

2003年に新紀元社よりウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から発売された『Call of Cthulhu Roleplaying Game』の翻訳がA4ムックで販売されました。「クトゥルフの呼び声」で使われていたBRPでなく、d20システムによるものであり、同じd20システムを作用している『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とルールが完全互換しているため、これがあればD&Dのファンタジー世界に召喚されたクトゥルフを冒険者が退治するシナリオも可能になりました。なお、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から発売されているD&D5版にも狂気のルールが取り入れらており、「正気度判定」というオプションルールも存在します。

クトゥルフ神話TRPG

2004年にエンターブレインより同年アメリカで発売された『Call of Cthulhu』の第6版(Sixth Edition)の翻訳から半年後に販売されました。システムは「クトゥルフの呼び声」と同じBRPであり、ホビージャパン版とほとんど変わっていないため、以前のサプリメントもそのまま使用可能でした。『クトゥルフの呼び声』と同じく、1890年代、1920年代、現代(1990年代)米国の3つの時代を舞台にできる。この通称6版が販売されたタイミングでクトゥルフ人気が再加熱したため、オリジナルのシナリオも多く存在しています。そのため7版が出ている今でも購入されているルールブックです。

新クトゥルフ神話TRPG

2019年に『新クトゥルフ神話TRPG』と改題された第7版として翻訳が発売されました。通称7版であるこのルールブックではシステムはこれまで同様のBRPですが、キャラクターの能力値がロールしやすいようにもともと5倍になっているほか、技能の見直しや戦闘や対抗ロールといった部分でも若干変更され、より細かい感じになっています。6版以前のサプリメントを使うことはできますが、能力値や技能の調整が必要になっています。

トレイル・オヴ・クトゥルー

2020年に書苑新社より発売された「ガムシューシステム」という、調査や推理、探索に特化した汎用ルールをベースにしており、能力値を撤廃して物語とロールプレイを重視したものです。該当する技能さえ保持していれば情報を収集することができます。6面体サイコロ1個で判定おこなう、テンポのよいゲーム進行により物語への没入感をより深めています。

Kutulu

2022年に発売されたスウェーデン発のクトゥルフ系TRPGです。ミステリー小説を追体験するかのように楽しめるルールセットは、シンプルでありながらクトゥルフ作品として『狂気』の進み方も特徴的です。

クトゥルフ神話TRPGのやり方

ダイス
クトゥルフ神話TRPGをやるにあたり、役割が大きく2つに分かれます。一つはキーパーと呼ばれるそのゲームを司る神のような存在です。またもう一つはプレイヤーでキーパーの用意した舞台の登場人物で各自探索者の1人を担当します。キーパーが舞台を用意し、プレイヤーは舞台の中の役になりきり、行動をダイスを用いて判定しシナリオのゴールを目指します。

たとえば某製薬会社の創業者がかつて住んでいた屋敷で行方不明の同僚を探しに来た警官の話をクトゥルフ神話TRPG的にすると以下のようになります。

キーパー:君たちはヘリから降りて同僚が向かった洋館の入り口を見つけて中に入りました。エントランスには明かりが灯っており中央に大きな扉と左右にも扉そして両脇を登る階段があり、登った先にも扉があることがわかります。

クリス(探索者:職業は警官):とりあえず銃を構えます。そして、ここが安全かどうか確かめたいです。

ジル(探索者:職業は警官):そうね。私も銃を抜いて構えながら正面の扉へ進みます。

キーパー:エントランスに怪しい物影はなく、正面の大きな扉にたどり着きました。扉は焦茶色で重厚感があり、取手には装飾が施されています。取手の付近に鍵穴があります。

ジル:そっと扉を開けます。

キーパー:鍵がかかっているのか扉は開きません。

クリス:ということは別の扉から中を調べるか、鍵開け技能を使うか、この扉をぶち破るかだね。まあ、警官だから意味もなくぶち破るような真似はしないけど・・・。

ジル:2人とも鍵開け技能は無いし、左の扉から入ってみましょう。

キーパー:OK。2人は左の扉を開けました。扉の先は廊下になっているが明かりがついておらず真っ暗です。

ジル:懐中電灯を点けるわ。銃の下から照らす感じで。ゆっくり進みましょう。

クリス:僕もそうする。

キーパー:2人は暗闇を懐中電灯で照らしながら進むと正面の暗闇から何かクシャッ、クシャッといった音が聞こえてきました。

クリス:懐中電灯を音の方に向けます。

キーパー:クリスの持つ懐中電灯が音の方を照らすと横たわっている制服姿の人と覆いかぶさるように動いている白衣の人物が背を向けています。光が当たったことに気づくと白衣の人物はゆっくりと振り返ります・・・。その顔は腐ったようにウジが湧いており、口元には大量の血が付いていました。ほぼ白目しかない目は2人を見つめています・・・。それではSANチェックをしてください!

クリス:(10面体を2個振り、値は6と7)SANチェックの結果は67。SAN値(正気度)が55しかないから失敗した!!!

ジル:(同様に10面体を2個振り、値は2と3)私は23。私は60あるから成功!!

キーパー:じゃあクリスは1d8してみて。(結果は3)よし、2人は白衣の人物のただならない姿から化け物と思い、クリスは恐怖のあまり一瞬体が強ばり、3ポイントSAN値を失います。ジルはその化け物の異様な姿にほんの少し驚いたもののしっかりと銃を構え見定めています。化け物はゾンビのような風貌をしておりゆっくりと立ち上がり2人に近寄り始めました。それでは、ここから戦闘です!

と、このようにキーパーが情景描写や物語の進行を行い、プレイヤーが登場人物の1人として行動して楽しみます。シナリオの中でゴールを見つけ出し、なんらかの形でそのゴールに到達するとシナリオは終了し、探索者は報酬や経験を得ることができます。

プレイ自体は最低でもキーパー1人とプレイヤー1人いれば成立しますが、シナリオによってはプレイヤーの人数の指定もあります。もしこれからクトゥルフ神話TRPGを初めてみたいのであれば友人と一緒に始めるのも良いですし、TwitterやディスコードなどでSNSで参加する人を募集をしていたりしているので参加することもできます。オンラインセッションになりますが、初心者でも参加OKなので一歩踏み出して参加してみましょう。

キーパーの役割を知っておく

TRPGではゲームを司る神のような存在をゲームマスターと称しますが、クトゥルフ神話TRPGではキーパー(KP)と言います。キーパーとはサッカーのゴール前を守る人ではなく、管理者という意味合いを持っています。キーパーの仕事は多岐に渡り、ゲームをする日取りを決める、参加するプレイヤーを集う、ゲームに使うシナリオを選ぶまたは自作する、キャラクターの作成を見守る、といった事前の準備から、プレイ当日のシナリオ進行やキャラクターの行動判定などを1人で行います。キーパーはホストであるため、お客さんであるプレイヤーを楽しませる必要があります。

プレイヤー(探索者)の役割を知っておく

プレイヤーはキーパーが用意した舞台に登場するキャラクターである探索者の1人を演じます。探索者には名前や背景の他に能力値や職業などが存在します。プレイヤーはその探索者になりきり、探索者としての人格を演じます。慣れていないプレイヤーはいまいち人格になり切ることができずに俯瞰的な自分を見てしまい、ロールプレイが恥ずかしくなることもあります。ここでプレイヤーが探索者になることができれば舞台の主役の1人となり、さまざまな謎や恐怖に挑むことができます。プレイヤーは探索者の行動を通じて、結果はどうであれ全員が楽しむことを心がけます。

リプレイ動画やリプレイ集で雰囲気を掴んでおく

クトゥルフ神話TRPGを初めてプレイする場合、どのようにやればいいかわからないことがあります。その場合は先人の知恵と経験を参考にすると良いでしょう。先人の知恵とはリプレイ動画やリプレイ集のことで、実際のプレイでのやり取りが記録されています。とくにあまり編集の手が入っていないリプレイ動画であれば、声のトーンなどもわかるので雰囲気を掴むのは最適でしょう。

クトゥルフ神話TRPGで必要なもの

クトゥルフの楽しみ方
クトゥルフ神話TRPGで必要なものは「みんなで楽しむ」という気持ちです。クトゥルフを楽しむにあたり、一番重要なのは「探索者は生き残りたい」という前提を持つことです。クトゥルフではファンタジー系やSF系とは違い、ヒーロー的な行動はあまり求められていません。むしろ、恐ろしい存在と対峙した時に泥臭くても生き残ることができるかか重要になります。

狂気を楽しむ

探索者は恐ろしい体験をするあまり正気を保てるかを判定するSANチェックを行います。この判定結果により探索者は心に傷を負い、酷い時には狂気に陥ります。狂気に陥ると理性的な行動は全く取ることはできず、破壊衝動が起きたり逃亡したりします。他に仲間がいたら助けてくれるかもしれませんが、気づいたらとんでもないところにいるということもあります。クトゥルフの場合は自分のキャラクターにあまり高い理想を持たせず、うっかり狂気になった場合もそれを受け入れて、そのとんでもない行動すら楽しむようにすると良いでしょう。

クトゥルフ神話を楽しむ

探索者が恐ろしい体験をするところの多くにクトゥルフ神話が関係しています。それが神なのか神話生物なのか、どうしてそのような存在と関わったのか、というクトゥルフ神話そのものを楽しむと良いでしょう。

失敗も成功も楽しむ

TRPGではキャラクターはその行動に成功もあれば失敗もあります。クトゥルフ神話TRPGでも同じであり、探索者は決めてほしいシーンで大失敗を起こすこともあれば、奇跡に近い状況で大成功を起こすこともあります。場合によっては失敗は命に関わることにもあります。自分の探索者が死んでしまうことは悲しいですが、それも含めて楽しめるようにしましょう。そして次回に向けて死なないような行動を考えてみましょい。

ダイスが必要なら用意しよう

同じ場所で行う場合、ダイスが必要です。BRPでは1d100のロール(1~100%の確率判定)で行動の成否を決定します。この判定に10面体のサイコロを2個使います。また探索者を作成する時は6面体を使い、探索者の持つ武器によっては8面体など他のダイスを使います。ただ、デジタル技術が普及した今ではダイスはアプリとしてもあるので、必須というわけではありません。なおオンラインで行う場合はダイス機能が付いているので特に必要ありません。

ルールブックは出来れば用意しよう

ルールブックはキーパーにとって必須アイテムです。シナリオやデータを万全に用意したとしても、探索者が予期せぬ行動を行なった場合にスムーズに解決するためにもルールブックは必要です。初心者プレイヤーにとってもルールブックは必須ではありませんが、何回かプレイヤーを経験することでルールブックを所持していた方が良いことに気づきます。キーパー・プレイヤーどちらにとってもすぐにルールブックを確認できることが円滑なクトゥルフ神話TRPGのプレイにとって大切になります。まずは頻繁に行うバージョンのルールブックを購入しましょう!

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ルール改定があり7版が出てもなお遊ばれているクトゥルフ神話TRPG6版。個人制作のシナリオの多くが6版で作られていることもあり、まだまだ人気のルールブックです。
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クトゥルフ神話TRPGの最新版のルールブックです。能力値の見直しや技能の変更、プッシュロールや戦闘マヌーバの追加など、6版のテイストを継承してルールが新しくなりました!神話生物の情報もあるのでこれ一冊で遊べます。キーパー、プレイヤー必携のルールブックです。

クトゥルフ神話TRPG公式サイト

クトゥルフ神話TRPGが人気の理由

現在TRPGのプレイヤーではクトゥルフ神話TRPGをプレイしている人が多く、その数は群を抜いています。なぜ、クトゥルフ神話がTRPG人気になった理由は一つではなくいくつかあると考えられています。

  • ニコニコ動画によるリプレイ公開
  • 立ち絵を得意とする絵師の参入
  • 自キャラを置き換えやすい現代設定でプレイが可能
  • SANチェックなどのフレーズが漫画アニメなどTRPGを超えたところで普及
  • ホラーを楽しむ環境の醸成

このほかにもありますが、これらの要素が複数絡み合ってプレイヤーを増やしています。

まとめ

いかがでしたか?クトゥルフ神話TRPGは「クトゥルフの呼び声」が登場してから進化し、いまでは最も遊ばれているTRPGです。ラヴクラフトの世界観を崩さずにうまくルールと交わったTRPGなので、リプレイ動画で見たようにホラーを楽しく体験することもできます。これからTRPGを始めようという人でも楽しめるよにデザインされているので、ぜひとも一歩踏み出してみてクトゥルフ神話TRPGを楽しんでみましょう。

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