TRPGのプレイスタイルの分類|マンチキンテキストを含む14タイプ

TRPGでは何度かロールプレイを行なっていると自分の傾向が少しずつ現れ、一番楽しめるロールプレイスタイルがわかります。プレイスタイルは迷惑をかけなければ、どれでも問題ありませんが、他のプレイヤーやゲームマスターとの組み合わせによっては楽しさや不快さも大きく変わってきます。自分がどのようなプレイスタイルを取っているかがわかるようにTRPGのプレイスタイルについて説明します。

TRPGのプレイスタイル

TRPGはコンピューターゲームとは違い、会話とダイスを通して成立するゲームのため自由度が高いと言われています。そのため自由なロールプレイやマスタリンhttps://trpg-japan.com/knowledge/classification-of-trpg-play-styles/?preview=trueグが行われ、無意識のうちにプレイスタイルが形成されます。全員に何かのプレイスタイルがあるわけではなく、またあるとしても問題はありません。ただ、あまりにも異なるプレイスタイルでセッションを回る場合、セッション終了時にわだかまりを持つこともあります。また、極端なプレイスタイルでなければ分類が当てはまらないことも多々あります。プレイスタイルを定義するためのものは特にないので、傾向が思いつくのであれば新しくまとめてみると面白いでしょう。

なお、TRPGにおいてはプレイ中またはセッション終了時にもスッキリしないことはよくあります。なので、自分とは合わないプレイスタイルの人がいても否定するのは止めましょう。

マンチキンテキストによるプレイスタイルの分類

TRPGのプレイスタイルが認識されるようになったのはマンチキンテキスト(munchkin.txt)が登場してからでした。マンチキンテキストとは1983年にSandy PetersenがJeff Okamotoへ伝えたアイデアが元で、1985年にJeff OkamotoがまずUSENETへ区分の1つであるリアルマンを投稿したことにより広まりました。このマンチキンテキストによると、テーブルトークRPGのプレイヤーの極端なロールプレイスタイルは以下の4通りに分類されています。

  • リアルマン(The Real Man)
  • リアル・ロールプレイヤー(The Real Roleplayer)
  • ルーニー(The Loonie)
  • マンチキン(The Munchkin)

munchkin.txtの翻訳版はこちら

リアルマン(The Real Man)

戦闘が好きなプレイヤーを表します。その中でも、小難しい戦術や戦略など考えずに真正面から敵と殴りあうのが好きなタイプをリアルマンと呼び、漫画やアニメなどにもよく登場するタイプです。Real Manとは英語で「真の漢(おとこ)」のようなニュアンスを持つ言葉であり、いわゆる「脳筋」です。このタイプは勇敢さや誠実さと同時に愚鈍さや不器用さも暗として示している。キャラクターの能力値でSTRが高く、INTが低いのであればこのようなキャラクターになるのはわかりますが、ステータスに関係なく殴り合う判断をプレイヤーが行います。ある意味ステータスに縛られない自由なロールプレイと言えます。

「見よ!この筋肉を!時として筋肉は全てを解決する!!」

リアル・ロールプレイヤー(The Real Roleplayer)

自分のプレイヤーキャラクター(PC)の緻密な描写に凝るタイプのプレイヤーを表します。不利になってでも、そのキャラクターの設定に即した行動をキャラクターにとらせようとすることが多く、融通が聞かないと思われがちです。D&Dのようにキャラクターにアライメントがある場合は遺憾無くその能力を発揮することができます。ただし、キャラクターの設定に凝りすぎると自縄自縛となり、セッションの進行を滞らせることにもなります。ある意味キャラクターをロールプレイするという点では正しいと言えます。

「くっ!殺せ!!」

ルーニー(The Loonie)

ルーニーとはセッションの進行とは関係なく、とにかく場を笑わせようと、受けを狙う行動ばかりを自分のPCにさせるプレイヤーを表します。外国人ではトム&ジェリーやシンプソンズ的なユーモアを好むようです。ダジャレやジョークを言って楽しませることもありますが、頻度が多いと目に余ることもあります。機微に富む人であれば上手にプレイをすることができるスタイルです。ただし、空回りする時は周りを楽しませるというメリットは失われ、進行を妨げることにも繋がります。サッカー選手ではありません。

「落とした武器を拾います。その時、ズボンのお尻も裂けるので後ろの人に中身を見せます。」

マンチキン(The Munchkin)

マンチキン
出典:ciatr[シアター]
TRPGのプレイスタイルで一番広く広まった単語は「マンチキン」でしょう。マンチキンとは自分のキャラクターが有利になる、またはデメリットを避けるように周囲にワガママな振る舞いをする聞き分けのない子供のようなプレイヤーを表します。もともとマンチキンは『オズの魔法使い』シリーズに登場する小人国およびその住人の名に由来しています。TRPGでは勝手にとんでも設定でキャラクターを作成したりGMの許可なく強設定にしていたり、ルールや設定などを一切無視して自分のために強引に押し切ろうとするものもマンチキンに含まれます。なお、のちに登場する和マンチと区別するために洋マンチと表現することもあります。

「私が用意したキャラクターは魔道王の100代目の子孫という設定で代々受け継がれている深淵の指輪を持っています。この指輪があると魔力が回復していきます。」

マンチキンテキスト以降に発生・分類されたプレイスタイル

最初に4つのマンチキンテキストで4つのスタイルが登場しましたが、その後さらにプレイスタイルが発生しました。

パワープレイ(Powerplay)

パワープレイとはサッカーで用いられる戦術として有名ですが、TRPGでは全く異なります。TRPGではサプリメントによる追加ルール・追加データなどが多く、これらをできる限り大量に採用するプレイスタイルのことを表します。最近のセッションではゲームマスター(GM)が募集時にルールブックを指定して上位ルールやサプリの使用・未使用を制限することも多いのであまりいません。基本的のこのプレイスタイルの背景は効率重視のマンチキンであり、追加ルールを持ち込むことで有利にしようとします。

ハック・アンド・スラッシュ(Hack and Slash)

ハックアンドスラッシュとは「叩き切る」を意味する”Hack”と、「斬り付ける」を意味する”Slash”を複合させた言葉で、戦闘偏重のプレイスタイルを表します。かつてD&Dは財宝が経験値であったために執拗にモンスターを襲いキャラクターを強化することに重きを置いたプレイヤーを揶揄する言葉でした。TRPGの醍醐味はその世界での立ち回りにありますが、問題解決にコミュニケーションを用いずに相手を武力で制圧する選択肢を選び、不必要に戦いを選ぶことがあります。

和マンチ

和マンチとはマンチキンが日本スタイルに変化したもので、もともとの自分を有利にするためのワガママな振る舞いをする聞き分けのない子供のようなプレイヤーではなく、物語を楽しむことよりも、設定されたルールやシチュエーションを把握した上で自分のキャラクターの強さを追求する、ルール至上主義者なプレイヤーを表します。日本でマンチキンと言うと和マンチになります。ルールに則っているため大きな問題はないものの、ルールに死角をついたような細かい取り決めのない部分を有利になるように解釈して使います。和マンチはある意味ファミコン時代の裏技と共通しています。TRPGではルールが及んでいない部分であり裏技はデバッグできなかった部分の活用をしているようなものです。また、基本的にはルール至上主義であるため、ルールを飛ばして行われる演出などに意見することがあります。見方を変えればルールに精通したベテランであるため、初心者プレイヤーのサポートやGMの裏回しのアシストに回ればセッションが円滑に進行します

和マンチの難しいところは対GMで物事を考える時かもしれません。戦闘において盲点を突いた想定外の行動を取るため、GMに高い応用力を求めます。GMからすると突然すぐには判断できないアクションの処理、または覚えていないアクションの処理を求められ、確認作業なしでノリで流してしまうこともあります。常にGMの裏を書いてやろうと思って和マンチをしている人は「自分は楽しい」を追求するあまり、他の人の楽しみを考慮しな苦なりがちです。なので、誰かと敵対するのではなく知略の結晶としてパーティー全員が楽しめるような和マンチを目指すと良いでしょう。

和マンチへの道

和マンチを目指すには生半可な道では難しいです。といっても血反吐が出るような努力が必要というわけでははありません。あくまでも、ルールやデータに精通しておくことが絶対条件と言えます。そして、その中でルールの穴や矛盾に気づき、その疑問を検証し、確信を得てからセッションで実践してみます。なお、セッションで実践は受け入れてくれるかどうか、GMの力量を見計らうようにしましょう。

  1. ルールブックを読み込む。
  2. 読み込んだ中で便利そうなものの活用をイメージする。(イメージプレイ)
  3. 条件が満たされない時の疑問を抱く。
  4. GMになったつもりで疑問を検証するする。
  5. 実際にGMに相談せずにセッションにぶちこむ。

地蔵

初心者プレイヤーに多い何もしゃべらないプレイヤーを表します。初心者の場合は何をしていいかわからないという事からしゃべらないということもありますが、セッションをある程度経験しているにも関わらず、何もしゃべらないプレイヤーも存在します。GMからするともっと積極的に参加してほしいと思うスタイルですが、本人はセッションを見ているだけで楽しいらしく、セッションに不満があるわけではありません。オンセの場合はこっそり離席している可能性があります。地蔵はTRPGに限らず音楽フェスなどで良い場所を取りながら立っているだけの人も地蔵と呼ばれています。

キャラクタープレイ

テーブルトークRPGが本来想定している「ロールプレイ」とは別のものになり切るプレイヤーを表します。わかりやすく言えば「ロールプレイ=役を演じる」のに対し、「キャラクタープレイ=役になりきる」です。セッション中の発言や行動が全てキャラクターのものであるように、現在のTRPGをプレイする上でのベースになっています。あくまでもTRPG上では普通のことであるため特別なことではありませんが、例えばキャラクター名がズゴックというプレイヤーがセッション後にズゴックさんと呼ばれるように、同士での面識がないのであればセッション後にキャラクターの延長としてプレイヤーが紐づけられることがあります。

メタプレイ

キャラクターの視点ではなくプレイヤーの視点でゲームをプレイする者を表します。リアル・ロールプレイヤーとは反対のスタンスであり、キャラクターの知識や性格からするとありえない行動を、プレイヤーにとって「面白そうだから」「有利だから」といってキャラクターに取らせることがあります。キャラクターが知らないはずのモンスターの能力をプレイヤーが知っているために、そのモンスターの弱点を突いた攻撃を行うなどがあります。このような時はGMが適切な技能ロールやINT判定を行うことがあります。ただプレイヤーの知識が悪いのではなく、その知識を上手に使いセッション進行をスムーズに行うことが求められています。

煮えプレイ

不自然なほど恥ずかしいセリフを叫んだり、過剰にドラマチックな行動をキャラクターにとらせるプレイスタイルを表します。もともとキャラクタープレイなどで役になりきっていたものが、やり過ぎなくらいの演出により暑苦しいロールプレイをすることでその場を煮えたぎらせるように熱く盛り上げます。プレイヤーが全員このタイプだと無駄に盛り上がる可能性がありますが、セッションの進行は滞るでしょう。「煮え」の概念はトーキョーN◎VAのコミュニティから自然発生したものと言われています。

バグプレイヤー、バグマスター

1991年に発売された『フォーチュン・クエスト・コンパニオン』で提唱された迷惑ゲーマーの呼称です。プレイヤーとGMにそれぞれ30個の質問をし、それに多く当てはまる迷惑なプレイヤーを総称して「バグプレイヤー」、迷惑なGMを総称して「バグマスター」と呼んでいます。厳密に言えばプレイスタイルではなく、ロールプレイやマスタリングに対しての第三者評価と言えます。ただ、今はあまりバグというようなことは無いようです。

口プロレス (くちプロレス)

通常のTRPGの手法とは異なり、ダイス等による判定ではなくゲームマスターへの説得・言いくるめ等のプレイヤーのコミュニケーションスキルでにより、状況の打開を図るプレイスタイルを表します。行動をダイスのランダムに委ねるのではなく、行動を含めた顛末を会話を通して醸成していくのである意味ロールプレイの正しい在り方とも言えます。この手法が成立させるには行動な話術が必要であり、最低でも会話で顛末を成立させることができる2人が必要です。

吟遊詩人

キャラクターの立場や行動を無視して、NPCだけで物語をすすめてしまうタイプのGMのマスタリングのことを表します。某ファイナルファンタジーなど山場がムービーのように展開し、プレイヤーはゲームをやっているのでなく「まるで吟遊詩人の物語を(一方的に)聞かされているようだ」と言う展開を表します。TRPGではGMがシナリオの流れで持っていきたい結末がある時に、変数となりうるプレイヤーの関与を極力減らすためにNPC主導になることがあります。シナリオ演出上NPCの活躍が重要なこともありますが、プレイヤーの出番を奪ってまで演出にこだわる必要もないでしょう。

ルールやシナリオとのプレイスタイルの関係

TRPGプレイスタイル
TRPGのセッションはGMの匙加減一つでプレイヤーが死んだり、ゆるゆるのシナリオになります。また、プレイヤーのロールプレイ次第でも結果は変わります。そのため、GMはルールを適用しないマスタリングをどこまで許容するか、またプレイヤーはそのようなマスタリングをどこまで許容するかが鍵となります。ルール無用になれば有利に立ち回ろうとするキャラクターだけ恩恵を受けかねません。このような時はルールを重視するプレイヤーは楽しくないでしょう。逆にルールに縛られすぎると創造性溢れる行動も処理できなくなることもあります。そのため、プレイスタイルが近い人たちのが集まる方がセッションは楽しみやすいです。

なお、日本ではあまり馴染みがありませんが、OSRという古き良き時代のTRPGを再検証・再評価する動きがあります。このようにOSR系ルールブックを元に遊ぶスタイルも存在します。

まとめ

いかがでしたか?TRPGはさまざまなプレイスタイルで遊ぶことができる自由なゲームです。世界観を重視したり、ルールを重視したり、キャラクターの設定を重視したり、その場のノリを重視したりとプレイヤーが何を重視するかでプレイスタイルにも影響があります。また、同じセッションに参加する人の傾向がわかると合わせることも可能です。プレイスタイルを重視する必要はありませんがプレイを楽しむ一要素として理解しておくと良いでしょう。

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