狂気の発作が起きた時のキーパーの対処方法|クトゥルフの醍醐味

クトゥルフ神話TRPGの醍醐味は戦闘ではなく狂気にあると言えます。狂気を楽しめなくては本当の意味でクトゥルフをロールプレイして楽しんだとは言えないでしょう。ただ、多くの場合その狂気のロールプレイや事後処理をキーパーが行う必要があるかもしれません。そこで新米キーパーにもわかりやすく狂気の発作が出た時の対処方法を解説します。

狂気とは

狂気とはInsanyと表記し、正気のSanityの反対語です。正気度ポイント(SAN値)が少しずつ減少しても狂気にはなかなか陥りませんが、一度に大量の減少だった場合は狂気に陥りやすくなります。狂気の深度は3段階あり比較的短時間の「一時的狂気」、回復時期が定まっていない「不定の狂気」、永久に回復することのない「永久的狂気」があります。

一時的狂気

一つの原因により心に一度に大きな衝撃を受ける正気度を5ポイント以上失った場合、その原因を理解したことで一時的な混乱に陥ることになる。この原因の理解とはINT(知力)による能力判定を行い、成功することで完全に理解することで脳と心にかかる負担から狂気へと変化します。逆に言えば、INTロールに失敗すれば一時的狂気に陥ることはありません。一時的狂気が発生した場合は狂気の発作はすぐに顕れます。数ラウンド経過すると発作は治りますが、7版であれば潜在狂気に移行し、その狂気は1d10時間続きます。

不定の狂気

ゲーム上の1日において現在の正気度ポイントの1/5以上を失った場合、回復までどのくらいかかるかわからない不定の狂気になります。6版では正気でない状態が続き、7版では発作は数ラウンドで治るものの、長い期間の潜在狂気に移行します。この狂気は自宅療養や入院などで治療を受けるなどして回復するまで続きます。

永久的狂気

正気度ポイントが0まで減少すると治療できない狂気に陥り、永久的狂気となります。このキャラクターはプレイヤーの手から離れキーパーが管理し、キーパーは肉体的な死ではない終焉をプレイヤーに見せる感じさせる必要があります。なお、狂気末の死亡であれば実際にあるかもしれません。

正気度の損失量段階発作の持続時間潜在狂気継続時間(7版のみ)
1度の損失が5ポイント以上一時的狂気6版:1d10+4ラウンド 7版:1d10ラウンド1d10時間で自然に解除。
1日の損失が現在正気度ポイントの1/5以上不定の狂気6版:長期 7版:1d10ラウンド長期に渡り不定。治療を受ける必要あり。
正気度ポイントが0になる永久的狂気永久に持続。狂気は潜在ではない。治療不可。

狂気に陥る原因

探索者が恐怖に直面した時にSANチェックが行われ、その判定が失敗した場合多くの正気度を失っていきます。強い恐怖であればあるほど、例えば「滅多切りされた人間の死体を発見する」場合正気度損失は1d4+1で、失敗時の損失が最大の時に5の正気度を損失します。もしこのロールでファンブルが発生したとすると探索者は5以上の損失が発生するので一時的狂気に陥ります。

正気度の損失の例はこのようなものがあります。

状況失うポイント失敗時の損失期待値一時的狂気になる可能性の有無
滅多切りされた動物の死骸を目撃0/1d21.5×
人間の死体や人体の一部を発見0/1d32×
川に血が流れているのを見る0/1d42.5×
滅多切りされた人間の死体を発見1/1d4+13.5
目覚めたら棺の中に閉じ込められている0/1d63.5
友人の非業の死を目撃する0/1d63.5
食屍鬼を見る0/1d63.5
死んだはずのものに会う1/1d6+14.5
ひどい拷問を受ける0/1d105.5
死体が墓場から立ち上がるのを見る1/1d105.5

一時的狂気にはならなくても1日の累計損失量がプレイ開始時の正気度の1/5を失った場合が強制的に不定の狂気に陥るので、徐々に狂気を引き起こす可能性がある小さい損失でも馬鹿にはできません。

狂気の効果

狂気

狂気は「狂気の発作」から始まり、「潜在狂気」、そして「回復」とフェーズがあり、そのフェーズでキャラクターはプレイヤーのコントロールから離れることもあります。

フェーズ症状説明
1狂気の発作短い発作として発生。プレイヤーのコントロールができない狂気の発作が発生する。
2潜在狂気7版からのフェーズでプレイヤーは完全にコントロールできるが、キャラクターは幻影、恐怖症、更なる狂気の発作に見舞われやすい。
3回復一定時間をかける、または治療することで狂気から回復する。

狂気の発作

狂気の1フェーズ目は狂気の発作です。この発作が発生するとプレイヤーは探索者のコントロールができなくなり、探索者はキーパーによってコントロールされます。何かとデメリットが多い狂気の発作ですが、実はメリットもあり、狂気の発作が起こっている間は正気度ポイントの減少はありません

潜在狂気

7版からの追加されたもので、狂気の発作が収まり正気を取り戻すと2フェーズ目に入ります。潜在狂気の間は発作が起きていなくても狂気の状態にあります。探索者は落ち着きを取り戻すのでコントロールはプレイヤーの手に戻ります。この潜在狂気の期間は精神的にも弱くなっており、1ポイントでも正気度を失うと再び狂気の発作が起こりコントロールを失います。

回復

一時的狂気は短時間で回復し、永久的狂気は回復する見込みがないため治療の意味はほとんどありません。不定の狂気の場合はしっかりした治療計画をもとに治療することで1ヶ月経過するごとに回復したかチェックすることができます。

狂気の発作が発生した時のキーパーの対処方法

探索者に狂気の発作が発生した場合、探索者のコントロールじゃキーパーに委ねられます。キーパーが探索者を動かしても構わないのですが、プレイヤーに狂気の行動を指示してロールプレイさせた方がセッションも面白くなるでしょう。

また発作が起きた状況によりキーパーの進行にも変化があります。探索者が複数人いる状況下で一部の探索者のみに狂気の発作が起こる場合、狂気の発作は「リアルタイム」で進行します。また、発作を起こした探索者の近くに他の探索者がいない状況や、全員が同時に発作に見舞われた場合、キーパーは数分から数時間の経過をさせて、その結果を「要約(サマリー)」することができます。

リアルタイムでの狂気の発作

リアルタイムの進行では狂気の発作が起きた探索者に対して他の探索者のロールプレイがポイントとなります。犠牲者である発作を起こした探索者が他の探索者に対して様々な意味で加害者になり得ます。多くの人は正気を戻そうと努力をしたりしますが、手に負えない状況になることもあります。

リアルタイムではどのような狂気の行動を起こすかを1d10で決定します。その症状をもとにキーパーが1d10ラウンド(6版は1d10+4)間の狂気の行動を指定しプレイヤーに指示をだすか。キーパーがコントロールを行います。

1d10の結果症状内容
1健忘症最後に安全にいた場所以降の記憶がない。
2身体症状症視覚や聴覚、四肢の麻痺。
3暴力衝動周囲に暴力と破壊をもたらす。
4偏執症誰も信じられず、周りから命を狙われていると思い込む。
5重要な人々バックストーリーの重要な人の見直し。その場の人を重要な人と思い込む。
6失神失神する。
7パニックになって逃亡する利用できるあらゆる手段を使って遠くへ逃亡しようとする。
8身体的ヒステリーもしくは感情爆発笑ったり、泣いたり、叫んだりして行動不能になる。
9恐怖症新しい恐怖症になる。恐怖の原因がすぐ近くにあると思い込む。
10マニア新しいマニアに陥李、自分のマニアに没頭する。

探索者のロベルトとジェーンは行方不明のジェーンの弟ディランの足跡を辿って古びた倉庫にたどり着いた。二人が倉庫に入ると中はがらんとしており、テーブルと椅子、そしてテーブルの上にブラウン管テレビとビデオデッキがあった。恐る恐るビデオを再生すると、そこにはディランがまさにこの倉庫で処刑されていることがわかった。二人は正気度ロールを行い、ジェーンが失敗。そしてINTロールを行うもこちらも失敗し、正気度を6失った。ジェーンは一時的狂気の発作が始まり、キーパーは二人いる状況であることからリアルタイムを選択。発作の内容を決定するロールでは偏執症となった。そこでキーパーはジェーンのプレイヤーに「自分もディランと同様に惨たらしく処刑されると思い込むようになり、これまで行動をともにしてきたロベルトも私を捕まえようとしている。どうにかして捕まらないようにしなければならない」とロールプレイの方向性を伝えました。

サマリーでわかる狂気の発作

探索者の周りに他の探索者がいない、もしくは全員が同時に狂気に陥った場合、キーパーは狂気が起きたあとから正気に戻る間までを短縮する(要約する)ことができます。これはリアルタイムの時とは違い、誰も狂気の探索者を助けることができないため数分から数時間(キーパーが定める時間)を狂気の状態で過ごしたことになります。探索者は狂気の最中の記憶はないため、正気を取り戻すとそれまでいた場所とは全く違う場所にいることに気づきます。

キーパーは狂気の時間の表現を要約することで「正気を取り戻したらこのような状態」という客観的な事実だけを伝える必要があります。なおサマリーの間に別の探索者と遭遇が考えられる場合は、リアルタイムの時と同じように処理をしてあげましょう

サマリーではどのような狂気の行動を起こしたかを1d10で決定します。その症状をもとにキーパーが1d10時間の狂気の行動を考え、その結果正気を戻した時の状況をプレイヤーに伝えます。

1d10の結果症状内容
1健忘症最後に安全にいた場所以降の記憶がない。
2身体症状症視覚や聴覚、四肢の麻痺。
3暴力衝動周囲に暴力と破壊をもたらす。
4偏執症誰も信じられず、周りから命を狙われていると思い込む。
5重要な人々バックストーリーの重要な人の見直し。その場の人を重要な人と思い込む。
6失神失神する。
7パニックになって逃亡する利用できるあらゆる手段を使って遠くへ逃亡しようとする。
8身体的ヒステリーもしくは感情爆発笑ったり、泣いたり、叫んだりして行動不能になる。
9恐怖症新しい恐怖症になる。恐怖の原因がすぐ近くにあると思い込む。
10マニア新しいマニアに陥李、自分のマニアに没頭する。

4人で心霊スポットに行って何もなく帰ってきた探索者たちはそれぞれ自宅へ帰りました。探索者の一人である神田がシャワーを浴びていると鏡に人影に気づきました。振り返ると人がそこに立っており、顔には血の気が無く、大きく口が裂けており、生気を感じられない何かがいました。目の部分は窪んで暗くなっていて見えないのに何故か視線があったと気づき、神田は正気度ロールを実行。失敗してしまったため正気度を5ポイント失いました。神田のプレイヤーはINTロールに成功したため、これが何なのかを感じ取り一時的狂気に陥りました。キーパーはサマリーで狂気の発作をロールさせ、結果は8。キーパーはパニックになったとして、神田が全裸で外に飛び出したとしました。一方、神田に忘れ物を届けようと家に向かっていたもう一人の探索者である佐々岡は目の前を全裸で走り抜ける女性を目撃。キーパーは佐々岡に目星ロールを行わせ、成功。佐々岡は走り抜けた女性が神田であることに気づき全力で後を追った。

探索者エントリーの追加・修正

狂気の発作が起きた探索者にはバックストーリーのを一つだけ追加もしくは修正を行うことで、より狂気の演出を強くすることができます。例えば、とても綺麗好きだった人が一切汚れを気にせず何年もずっと同じ服を着続けていると、それは普通の人からすると信じられないことです。このように普通の人からすれば「信じられない」ようなバックストーリーが追加、修正されるとキャラクターの狂気への転落を表現しやすくなります。またシナリオなどに関連したバックストーリーを生み出すことができれば、より意味のあるロールプレイにもつながるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?狂気の発作は物語を強く演出するエッセンスであり、キャラクターに新しい要素を吹き込むことができます。狂気の演出はキーパーが決定しますが、コントロールをプレイヤーに返してロールプレイしてもらうことができれば、プレイヤーも納得して狂気を受け入れることができます。狂気というネガティブな要素でもキーパーとプレイヤー一緒に楽しめるようにしたいですね。

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ルール改定があり7版が出てもなお遊ばれているクトゥルフ神話TRPG6版。個人制作のシナリオの多くが6版で作られていることもあり、まだまだ人気のルールブックです。
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クトゥルフ神話TRPGの最新版のルールブックです。能力値の見直しや技能の変更、プッシュロールや戦闘マヌーバの追加など、6版のテイストを継承してルールが新しくなりました!神話生物の情報もあるのでこれ一冊で遊べます。キーパー、プレイヤー必携のルールブックです。

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