潜在狂気を楽しむためのロールプレイの処理のやり方
新クトゥルフ神話TRPGでは狂気の段階が進むと潜在狂気というフェーズが追加されました。このフェーズが追加されたことによって、ロールプレイにどのように変化をもたらすのか。キーパーとプレイヤーのロールプレイに役に立つ潜在狂気について解説します。
潜在狂気とは
新しく追加された狂気のフェーズである潜在狂気とは狂気の発作の後にある狂気の状態を表します。一時的狂気や不定の狂気での発作が落ち着くとこの状態になるのですが、この状態でもキャラクターは狂気状態にあります。
発作の状態と違い行動はプレイヤーがコントロールすることはできますが、常に発作のトリガーに指がかかっている状態であり、1ポイントでもSAN値(正気度)を失うと再び一時的狂気であれば1d10時間、不定の狂気であればおそらくセッション中続きます。
潜在狂気による影響
潜在狂気においてはキャラクターは無意識下で様々な影響を受けます。それは特定状況においての反応が通常と変わったり、幻覚や幻聴が見えたりとキャラクターに降り注ぐ影響は大きいです。これは外的な影響というよりは内面的な問題であり、狂気から脱しない限りは起こり続けます。
恐怖症とマニア
潜在狂気は発作中とは違い冷静に行動できるタイプの狂気ですが、キャラクターのバックストーリーの「恐怖症」と「マニア」がある場合はキャラクターの反応に変化が現れ、アクションなどの判定にペナルティダイスを受け取ることになります。
恐怖症のロールプレイ
恐怖症は特定の物や行動、状況などに対して激しい恐怖を覚えます。この恐怖は具体的に何が怖いか説明がつかないもので、成長過程でのトラウマやロールプレイでの恐怖体験から追加されることがあります。この恐怖症は通常時であれば我慢することで克服することができたりもしますが、潜在狂気の下では恐怖の対象に対して逃げたい、離れたいなどの激しい抵抗を示します。このような状況下では戦闘と逃走以外の行動ではペナルティダイスを一つ受け取ることになります。
恐怖症のロールプレイは下記の症状を表現することでよりリアリティが増し、恐怖にかられた行動につながることでキャラクターの恐怖の大きさを表すことができるでしょう。
恐怖症の症状例:動悸、震え、窒息、制御不可能な不安など。
ジェーンは狂気の発作が発生した際に老人恐怖症に陥っています。友人と出かけた先で一人の老婆が道を尋ねてきました。ジェーンは老婆に嫌悪感を感じながらも対応しました。二週間後、潜在狂気に陥っていたジェーンは通りすがりの老夫婦を見かけ、自分が老いていくことへの激しい動悸が起こり強烈な恐怖にかられます。メイクが若干落ちたことで老いを防ぎきれないと思い込み、老いが加速する恐怖から逃げ出すために安全な家に帰ることにしました。止めてある車に乗り急いで帰ることから、キーパーは運転ロールを指示し、戦闘でも逃走でもないことからペナルティダイスを一つ追加しました。なお、ジェーンは自宅に戻り化粧を落としすことで恐怖から解放されペナルティは消えました。
マニアのロールプレイ
マニアは特定の物や行動、状況などに対して激しい執着を見せます。このマニアは執着(強烈な欲求)から強迫性を引き起こしますが、通常時は問題なく我慢することができます。ただ潜在狂気の下ではマニアの対象の刺激に対して何かしなくてはいけないという強迫に駆られます。このような状況下で強迫観念が満足させられるか、刺激の対象から離れるかしない限り全てのロールに対してペナルティダイスを一つ受け取ることになります。
マニアのロールプレイは下記の症状を表現することでよりリアリティが増します。マニアの行動の根底には欲求を満たすことで得られる多幸感があり、それを実現することに執着します。
マニアの症状例:活動の全体的な増加、おしゃべり、妄想のような自尊心の尊大、睡眠の必要性の減少、注意散漫、軽率な行動、幻覚、妄想、奇妙な行動など
ブランドンはアルコール依存症(アルコールマニア)であり、医者から禁酒するよう言われてた。病院に行った三週間後、潜在狂気に陥っていたブランドンは逃げ込み隠れた建物がアルコール飲料の保管倉庫だったことに気づく。猛烈な誘惑に耐えていると人影が近寄ってくるのがわかった。ブランドンのプレイヤーは隠れると宣言し、キーパーは隠密ロールをするように指示。ただし、潜在狂気中でマニア状況下であるためペナルティダイスを一つ追加するようにした。なおブランドンが我慢せずアルコールに手を出した場合、ペナルティダイスこそないが酔い潰れてすぐに発見されていただろう。
妄想とリアリティチェック
キーパーは潜在狂気に陥っているキャラクターに対していつでも妄想を見せることができます。そしてプレイヤーはキャラクターの妄想を見破ることができます。
妄想の活用
キーパーは現実の情報としてキャラクターに妄想性の情報を与えることができます。妄想はキーパーがプレイヤーを信じさせることで成立しますが、それは意味のない要素ではなくキャラクターに不安を与える何かの情報を与えた方が良いでしょう。またバックストーリーに関連する妄想を与えることができれば、そこに違和感を感じて妄想だと気づくかもしれません。キャラクターにとって妄想は見破らない限りは現実と同じであり、正気度を失う恐れのある妄想は現実と同じように正気度を失う恐れがあります。
妄想を見破るリアリティチェックロール
キャラクターが潜在狂気の状態であれば、そのキーパーから与えられた情報に違和感を感じた際にリアリティーチェックを行うことができます。リアリティーチェックとはキャラクターが認識しているものが現実かどうか見破ることができるかをチェックします。リアリティーチェックが成功したのであればキーパーは正しい知覚情報を伝える必要があります。また、リアリティーチェックは潜在狂気のキャラクター以外でも幻覚などを見破る際にも使うことができます。
リアリティーチェックは正気度で1d100の判定をする正気度ロールを行います。ただ何度も行うようなものではないため、失敗した時には正気度を1ポイント失います。潜在狂気であったキャラクターが失敗した場合、この1ポイントの正気度を失うことが狂気の発作を引き起こします。
リアリティチェックの結果 | 内容 |
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失敗 |
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成功 |
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精神分析技能による処置
技能の精神分析は不定の狂気を長期にかけて治療する他に、短い時間恐怖の対象に立ち向かったり、妄想か本当なのかを見ることができます。技能ロールを成功することで短い時間だけ正気を失った探索者が恐怖症あるいはマニアの影響を無視できるようにすることも可能です。
精神科医のロザリーと友人で潜在狂気に陥っている閉所恐怖症のベスは何者かに追われています。二人が逃げ込んだ先は行き止まりでそこにある部屋へと入りました。部屋には窓や扉がなく、追い詰められています。どうにか逃げるための場所がないかを調べ、目星ロールに成功しダクトから逃げることができることがわかりました。ロザリーはベスにダクトから逃げることを提案するも、閉所恐怖症であるベスは頑なに拒否をしています。そこでベスはキーパーにベスの精神分析をして恐怖症を一時的に抑え込みたいと提案。キーパーも許可して精神分析ロールを実行。ロールは成功しベスは一時的に閉所への恐怖がなくなりました。
狂気とクトゥルフ神話
狂気は時としてキャラクターに知識を与えることがあります。クトゥルフ神話に関係したことで狂気になるとクトゥルフ神話の技能が上がります。初回では+5ポイント上昇し、その後クトゥルフ神話に関係した狂気が起きるごとに+1ポイント上昇します。
まとめ
いかがでしたか?クトゥルフ神話TRPGでは潜在狂気の時に恐怖症、マニアがあればロールプレイが一段と面白くなります。強烈な恐怖にかられ仲間を置いて逃亡したり、依存症のようになってどうにもならなくなるなどを通常のロールプレイでは考えられないような行動が勝手に行われたりします。恐怖症やマニアは予期せぬ形でキャラクターに危機をもたらしますが、正気と狂気の際を楽しむことこそこのプレイヤーの醍醐味であり、その管理や進行を上手に取り仕切ることこそキーパーの醍醐味でしょう。楽しく狂気を遊びたいですね。