不定の狂気とは|クトゥルフ神話TRPG初心者でもわかる不定の狂気
目次
不定の狂気
はクトゥルフ神話TRPGにおける3つの狂気のうちの一つです。期間の短い一時的狂気はわかりやすいのですが、不定の狂気での潜在狂気は長いためプレイヤーの腕の見せ所と言えます。そこで楽しくロールプレイができるように不定の狂気について解説します。
不定の狂気とは
不定の狂気とは英語で「indefinite insanity」といい、長期間にわたる狂気であり、「不定」というだけあっていつまでという時期がわからないけど正しく治療すれば回復の見込みはある状態を表します。探索者がシナリオの途中で狂気に陥ることはよくありますが、多くは一時的狂気であり、最悪の場合は永久的狂気ということもあります。そのためプレイヤーが探索者の治療を行わないのであればずっと続く狂気と言えます。
狂気が再発しやすい
7版では不定の狂気になった探索者は治療が完了していないのであれば、すぐに狂気に陥りやすいハンデを背負ったまま生活をしています。一度発狂を抜けると正気を取り戻しますが、すぐに発狂しやすい状態であるためプレイヤーにはロールプレイ難度は上がるものの楽しい状況と言えます。
複数の症状になることもある
7版では不定の狂気の治療が完了していない探索者は、狂気の発作が発生するたびに新たにマニア・恐怖症が追加される可能性があります。水恐怖症を持つ探索者が再度狂気に陥りニンニク恐怖症にもなる、ということもあります。
不定の狂気の処理
6版では不定の狂気は「長期間回復しない狂気状態」を指し、プレイヤーがコントロールできない状態で退場することになります。7版では「回復期間が定まっていない狂気」であり、一時的狂気と同じように「狂気の発作」「潜在狂気」のプロセスを経ます。
発作自体は一時的狂気と不定の狂気は同じ処理を行い、潜在狂気から違いが出ます。シナリオ終了後に探索者は不定の狂気を持ち帰るので、キーパーは治療を提案すると良いでしょう。
上の図では正気度ロールに失敗から長い期間で不定の狂気に陥り、治療、狂気状態を解除するまでの処理の例です。
- 正気度ロールに失敗して不定の狂気に陥り、狂気の発作が発生
- 発作が収まり潜在狂気状態になる
- シナリオで正気度ポイントを1以上失い再発作
- 発作が収まり潜在狂気状態に戻る
- 治療を開始
- 時間をかけて不定の狂気が治療される
不定の狂気になる条件
ゲーム中の一定時間内にSAN値(正気度ポイント)を1/5以上失った場合に不定の狂気に陥ります。これはSAN値を少しずつ失うことになれば一時的狂気にならずにいきなり「不定の狂気」になることもあり得ます。また正気度の損失によっては不定の狂気と一時的狂気のどちらにも同時に該当することもありますが、一時的狂気と不定の狂気それぞれ判定するのではなく不定の狂気のみの判定で良いでしょう。
不定の狂気でINTロール(アイデアロール)は不要
一時的狂気に陥るかの判定にはINTロール(6版のアイデアロール)を行いますが、不定の狂気の場合はこのロール自体を行いません。正気度を1/5以上失ったら必ず不定の狂気に陥ります。また一度に5ポイント以上の正気度を失い、その結果1/5以上の損失になった場合は不定の狂気になるためINTロールは不要です。
6版によるSAN損失時間
6版ではSAN損失時間はそのシナリオで初めてSAN値を損失してから「ゲーム時間で1時間以内」の損失合計が1/5以上で該当します。なお6版では不定の狂気に陥った場合は長期間回復しない狂気状態であるためプレイから外れることになります。
探索者のカンナギ(SAN値35)は失踪した友人の部屋を調べていると高級メガネケースを発見し、何も考えずにケースを開けました。するとなかには眼球を大量の蟲が入っていました。ケースから蟲は溢れ出し、眼球と視線が合いました。カンナギはヒッと驚きSANチェックを行うもダイスの目は76で失敗。その結果4ポイントのSAN値を失いましたが一時的狂気は免れました。
次に浴室を調べに入ると浴槽に大量の血が飛び散っているのを目撃、SANチェックを行い22で成功しました。そのあと30分ほど失踪の手がかりを探し回り、地下室への隠し扉を発見しました。扉を開けると強烈な異臭がカンナギを躊躇わせましたが地下室に進みました。暗掛の中進むと右足に何か当たってくるのを感じたカンナギはライトで照らすと人の指が蟲のように這いずり回っていることがわかりました。ヒッと驚きSANチェックするもダイスの目は54で、さらに4ポイントのSAN値を喪失しましたが一時的狂気を免れました。ただし最初にSAN値を失ってから1時間内のSAN値の損失量がSAN値の1/5以上になったため、カンナギは不定の狂気に陥ります。この結果シナリオ中に回復する見込みなしと判断され、探索者はキーパーが預かることになりました。
7版によるSAN損失時間
7版では正気度損失時間はそのシナリオで初めて正気度を損失してから「ゲーム時間で1日以内」の損失合計が1/5以上で該当します。なお7版では不定の狂気に陥った場合でも潜在狂気状態でプレイに参加することは可能です。なお厳密に1日という縛りではなく、安心できるスペースに戻るまでの間といった期間を区切ってももんだいありません。
プレイ開始時の現在正気度が42のナオミは早朝に廊下で何かを踏みつけブシュっと音が出たことに気づきました。恐る恐るみてみると人間の指が蠢いており、それを踏みつけたことを理解しました。そしてSANチェックを行ったものの失敗したため、正気度ポイントを4損失しました。一時的狂気はなかったもののゲンナリとした気持ちになりました。少しづつ正気度を失っています。
慌ててその場を離れ建物から出ようとしたところ、猫の死体を食べているかのように指が這いまわっているのを目撃しました。ここでSANチェックを行うものの失敗し、さらに3ポイントの正気度を失いました。
昼過ぎに足の裏に激痛を感じ、足の裏を見てみると朝に蠢く指を踏んだところが腐れ落ちるようにただれていました。その症状に驚きSANチェックを行うも失敗し、さらに2ポイントの正気度を失いました。この損失により朝から合計で9ポイント減少しています。これは現在正気度の1/5以上を失ったことになり不定の狂気に陥ります。キーパーは狂気の発作が発生することを告げました。
なお不定の狂気による発作が発生した場合でも、仲間が近くにいて干渉できるのであればリアルタイム、だれも干渉できないのであればサマリーで処理します。
不定の狂気になるまでのSAN値損失計算
不定の狂気は6版・7版どちらも変わらず正気度の損失が1/5以上で、どのくらいの量を損失すれと不定の狂気に陥るのかを計算した表が以下のものです。左側は不定の狂気の対象となる最初のSAN値損失が発生する前のSAN値で、右は期間内でどこまで損失すると不定の狂気になるかを表しています。
SAN値損失が最初に発生する直前のSAN値 | 不定の狂気に陥る損失量(SAN値1/5) |
---|---|
96~100 | 20 |
91~95 | 19 |
86~90 | 18 |
81~85 | 17 |
76~80 | 16 |
71~75 | 15 |
66~70 | 14 |
61~65 | 13 |
56~60 | 12 |
51~55 | 11 |
46~50 | 10 |
41~45 | 9 |
36~40 | 8 |
31~35 | 7 |
26~30 | 6 |
21~25 | 5 |
16~20 | 4 |
11~15 | 3 |
6~10 | 2 |
1~5 | 1 |
上記の表を見て分かる通り、正気度ポイントが少なければ少ないほど不定の狂気に陥りやすくなっています。
不定の狂気による発作の狂気表
不定の狂気でも一時的狂気でも狂気の発作が発生した時は狂気表を元にどのような発作が発生したかを決定する必要があります。狂気は探索者の置かれた状況でリアルタイムで処理されるかサマリーで処理されるか決定します。
不定の狂気の期間
不定の狂気に陥ると一時的狂気同様に発作が発生します。発作は1D10ラウンドより幾ばくか長い時間で治りますが、次の潜在狂気の段階の長さが異なります。一時的狂気による潜在狂気であればゲーム時間で1D10時間の狂気で済みますが、不定の狂気が原因の場合は治療が完了するまで長期にわたり潜在狂気は継続します。
不定の狂気の期間中でもプレイはできる?
7版では不定の狂気による潜在狂気の状態でも探索者はロールプレイできますが精神的に弱っているギリギリの状態であり、恐怖症やマニアを持つ場合はその影響を強く受けます。1ポイントでも正気度を失うと狂気の発作が起きる潜在狂気ではロストの危険性も高くなります。そのため治療が可能であれば探索者はすぐにでも治療に入ったほうが良いです。
不定の狂気の場合、潜在狂気は治療が終わるまでずっと続き、以下の影響を受け続けることになります。
- 1ポイントの正気度損失で発作を起こす。
- 恐怖症やマニアによる影響が行動に現れる。
不定の狂気の期間中での戦闘
不定の狂気による潜在狂気だからといって通常は戦闘に大きな影響はありません。ただし探索者が恐怖症やマニアを抱えており、その場にその対象がある場合はまともに行動することはできなくなります。恐怖症は逃げ出したくなり、マニアは興奮し執着するか惚けてしまいます。
シナリオ中盤で不定の狂気に陥ったナオミはひとまず発作が収まったものの水恐怖症を発症しました。ひとまず発作は収まり狂気は「潜在狂気」の段階に移ります。この潜在狂気は不定の狂気によるものなので長期の治療ができず、シナリオが終了するまでは水恐怖症を抱え、1ポイントでも正気度を失うと再び発作を引き起こしやすい危険な状態でロールプレイをすることになりました。
不定の狂気の解除方法
不定の狂気の解除とはいつ治るかわからない潜在狂気の治療と言えます。一晩寝れば回復するような一時的狂気による潜在狂気とは異なり、心穏やかな環境で時間をかけて治療するほか、精神科医が「精神分析」を行う治療などがあります。どれを選ぶにしても最低で1ヶ月以上の治療期間が必要で、人的もしくは金銭が必要になります。治療せずともロールプレイは可能ですが、正気度1ポイント減少で狂気の発作が起きることを考えるとシナリオ終了のタイミングからでも治療したほうが良いです。
主な治療法は以下のものがあります。
- 自宅療養する
- 施設で治療する
- キー・コネクションを使った自己精神療法
シナリオが終了してどうにかロストせずに済んだナオミは不定の狂気を治療することをキーパーに相談しました。キーパーは次回シナリオがすぐには発生しないことにしていたので治療を了承しました。ナオミは両親の元に身を寄せて自宅療養を希望し、キーパーは治療ができたかを判断することになりました。ゲーム時間で1ヶ月後に1d100を行い成功して正気度を2ポイント回復しました。そして正気度35を目標に正気度ロールを行いましたが失敗し、不定の狂気の治療はできませんでした。さらに1ヶ月後に正気度ロールを行い成功!ナオミは治療開始から2ヶ月後に不定の狂気を治療し、潜在狂気状態から脱することができました。
不定の狂気でもシナリオを楽しむために
探索者がどれだけ気をつけても不定の狂気に陥る時は訪れるものです。特に正気度の減少が著しくなるとすぐに不定の狂気へ突入します。そんな状態こそロールプレイを楽しむのがこのクトゥルフの醍醐味と言えます。特に恐怖症とマニア持ちであればそのロールプレイを見せつけるべきですが、その行動は間違いなく周囲に混乱をもたらします。仲間に襲いかかりマヌーバで返されて制圧されるも善し、一人逃げ出しみんなが乗ってきた車で逃走するも善し、そこは面白く演出するところです。
ただ、ここで重要なのは不定の狂気の探索者がシナリオをメチャクチャにする事が重要ではなく、理性があったら取らないメチャクチャな行動に巻き起こることを周囲にロールプレイさせる、つまり巻き込むことが重要です。そのためには探索者もキーパーも最初に細かい描写をする必要があり、周囲に狂気っぷりを明確に伝えましょう。
まとめ
いかがでしたか?6版であれば退場になりますが7版であれば不定の狂気を抱えてのプレイも可能です。ただし、正気と狂気のギリギリのところを歩いている状態と同じで、いつ狂気に転げ落ちるかわかりません。狂気が進行していくたびに正気を取り戻すのも難しくなり、永久的狂気に陥ることもあり得ます。潜在狂気を楽しむこともクトゥルフ神話TRPGの醍醐味ですが、末長く探索者を続ける上でも不定の狂気を正しく理解しておきたいですね。
不定の狂気を楽しむためにもルールブックは持っておきましょう。