初心者GMの情景描写・表現力の向上に良い2つの方法

ゲームマスター(GM)をしているとシナリオの進行やロールを管理したり、プレイヤーが楽しめるように大変気を使っていることでしょう。中にはセッション中に上手くいってないと感じたり、正しく伝えることができていないと感じる場合もあります。事前に準備していて情報量はあるのに伝えきれていないのはGMのテクニックに改善の余地があります。そこで初心者GMにおすすめの情景描写・表現のやり方を解説します。

TRPGにおける情景描写・表現の役割

多くの会話で成立させるTRPGにおいては「伝える」ということがとても重要です。ではこの「伝える」とはなんでしょうか?答えは簡単で「相手が理解する」ところにあります。実際のセッションではマップやハンドアウト(HO)を除くとほとんど視覚情報がありません。通常人間は情報の9割は視覚から得ることに慣れており、同じものを見ることで共通のイメージで認識を得ることができます。しかし聴覚情報だけの場合、各個人でイメージの再現が行われるため認識のずれが生まれやすくなっています。そのため全てのプレイヤー(PL)に共通のイメージを持たせるためにもGMの伝え方が重要になります。

例えば次のようにGMが表現したとします。

「高さ30cmぐらいの女神の彫像がある」

この場合、女神像ということはわかるが自由の女神のようなものかニケーのようなものか、人によってさまざまです。もしかすると危険な彫像かもしれません。

そこで

「高さ30cmぐらいでフードがついたケープを纏った女神の彫像がある。その彫像の表情は慈愛に満ちており、不思議と神々しく感じる。」

とこのように表現した場合、PLはその像に神秘的な暖かさを感じさせ安全な女神像と判断するでしょう。

これはどちらが正しいかということではなく、使い方によってPLにとってベストの行動を暗示することができます。あえて少ない情報を渡してPLにいろいろと考えて自発的に動いてもらう方法もあれば、情報を多く与えて伝えることでGMに意図する結果が導きやすくするという方法もあります。

語彙力は必要?

GMがPLに伝えるためには語彙力は必要か?と言えば、答えはNOです。「忸怩(じくじ)」や「僥倖(ぎょうこう)」など日常的にあまり使わないような言葉は必要ありません。あくまでもPLにその意味や情景を伝えることができる(理解されやすい)言葉であるべきです。ただGMは演じるノン・プレイヤー・キャラクター(NPC)が難しい言い回しをするようなキャラクターだった場合は、そのキャラクターの発言であるため難しい言葉を使うのは問題ありません。あくまでもシステムとしてのGMの部分で難しい表現は必要ありませんが、日常会話として伝えることができるくらいは必要です。

情景描写のフォーカステクニック

古い建物の情景
セッションの進行で場所移動が発生した場合、新しく到達した場所がセッション上重要な場所(メイン舞台)であれば情景描写をする必要があるでしょう。その描写には順番があり、その順番通りの説明することでGMが求めるポイントにフォーカスさせることができます。このようにフォーカスすることでPLも取り巻く状況と取った方が良い行動を理解しやすくなります。

フォーカスは大きいものから順番に行い、必ず次の焦点を加えて描写します。例えば古びた屋敷に到着した時の描写のフォーカスする順番は以下の通りです。

  1. 空間の描写(一番大きい空間)
  2. 建物の描写(一番大きい空間の中にある対象物)
  3. PLを向かわせたい部分(扉)の描写(対象物にある誘導したい箇所の詳細)

空間の描写例では以下の通りで、次の焦点である「建物」が含まれています。

鬱蒼とした森を抜けるとそこには古びた洋館がある。近隣には他に建物は見つからず、通ってきた一本道しかここには繋がっていないようだ。建物の周囲に2mはあろう石壁で塀が作られているのだが、所々壊れており、野犬の侵入は防げそうにない。金属でできた黒い門は壊れたまま放置されているようで中に入ることはできるようだ。洋館の周囲30mほどは何故か草があまり伸びておらず、定期的に誰かが手入れをしているのかもしれない。正面には3階建ての洋館があり、右手には家畜小屋と思しき建物と並列して木造の小さな小屋がある。

建物の描写例では以下の通りで、次の焦点である「扉」が含まれています。

白塗りの洋館は3階建で所々外壁が落ちており、建物には手入れが予期届かないのか長い間放置されていることがわかる。正面に大きな玄関の扉があり、左右に一部屋ずつあるのだろう窓があり、そのままの広さで3階構造になっていると思われる。1階の窓には鎧戸が下りている。ただ2〜3階の窓にはこれだけ雨風がひどいにも関わらず鎧戸は降りていない。カーテンはあるようだが人影は確認できない。誰かが生活している雰囲気が全く感じられず、もしかすると誰かの別荘地なのかもしれない。正面の扉の前には大きな雨避けがあり5人程度なら雨を凌げそうである。

プレイヤーに向かわせたい部分の描写では以下の通りで、扉を開けて中に入るよう暗に行動を促しています。

雨が酷くなってきたのか、肌寒さを感じる。・・・正面の扉は黒い木材でできており、決して派手ではないが金属の装飾をいくつか施してある。取手は蛇をモチーフにしており、蛇が輪を咥えている。扉は合わさっておらず、右側が少しばかり奥に開いていることから鍵は掛かっていないようだ。

このように大きいものから小さいものへフォーカスすることでPLの意識を誘導します。勘の良いPLであればGMの意図を汲み取りますし、所々に制限(この場合は体温を下げる雨、危険な野犬)を設けることでGMの意図しない行動を無意識下に制限させます。なお上の情景では木造の小屋に行くようとGMが望んでいない選択をするPLもいるでしょう。その部分はGMの対応力に掛かってくるので上手に対応してください。

情景描写のテクニック

情景
フォーカスが話をする順番のテクニックでしたが、描写にもテクニックは存在します。GMはゲームを進行する上でデータを準備しているし、市販のシナリオにも情景の記述はあるでしょう。ただその設定を淡々と読むだけではプレイヤーの心には響きません。ただ設定を読むだけでも心に響く技術はあるので、どのように読むべきか朗読劇など使われる技術を理解しておくと良いでしょう。

GMが情景をリアルに思い描く

まず情景描写をする前にGMがリアルにその情景を想像します。これは人が認識していないもの・理解していないものを正しく伝えることができないのと同じで、GMが思い描けないものをPLが思い描くことはできません。まずは事前準備として情景を思い描くことを行いましょう。

思い描いた情景を見た時の気持ちや書き出す・思い出す

次に情報と感情の整理を行います。特に最初に思い描いた時の感情は大切で、その感情こそがプレイヤーに伝える必要がある部分になります。例えば不気味な屋敷を思い描いたときに「気持ち悪い」と思うのと「楽しそう」と思うのでは伝わり方が変わります。そして、なぜその感情が生まれたのか?というのを書き出しておき、説明の補足として使えるようにしておきます。ハンドアウトを作成するなど伝えやすくする工夫も大切です。

ほんの少しだけ感情を込める

実際にセッションでは事前に思い描いた時の感情や情報をもとに描写をします。淡々とした無機質な感じの「説明」では人には響きませんが、気持ちの入った表現であれば人に伝わりやすくなります。本来GMの進行ではあまり感情は必要ありませんが、メインステージの描写の時は少しだけ感情を込めて表現しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?状況の描写についてはGMの慣れによる部分が多いです。またどれだけ伝えようとしても伝わらないことも多々あります。しかしPLが頑張って理解しようとしてもGMがその伝える努力をしない限りは楽しめません。セッションの準備をするだけでも大変なのに、「説明読んでるだけですね」なんて感想言われた日には腹立たしくて眠れないかもしれません。しかし、プレイヤーがそう受け取ったということはマスタリング技術の向上の機会と捉えるべきです。二度とそんなことを言わせないためにも表現力の向上にも頑張りましょう!

関連記事一覧