「一つの指輪:指輪物語TRPGスターターセット」のレビュー

「一つの指輪:指輪物語TRPGスターターセット」のレビュー

近年、指輪物語に関連する動きが加速しており、2022年はアマゾンプライムで「ろーど・オヴ・ザ・リング:チカラの指輪」の配信が始まったり、電子書籍でも指輪物語の新版が販売されている中、TRPGではFree LeaguePublishingから発売されている「The One Ring Roleplaying」(TOR)が大ヒットしました。日本でもホビージャパンからTORのスターターセットを日本語訳した「一つの指輪:指輪物語TRPGスターターセット」が発売されており、その機運が高まっています。

TORの入門として位置付けているスターターセットではミドルアース第三紀2960年ごろのホビット庄を舞台にホビットたちのアドベンチャーを体験する事ができ、「一つの指輪:指輪物語TRPG」のコアとなる部分を体験する事ができます。また、スターターセットということもあり、複雑なルールの理解やキャラクター作成といった時間がかかる要素を排除しているため、誰でもすぐに遊ぶ事が可能です。

おしゃれな外装・箱

ボックスタイプであるスターターセットは上品で趣のあるアートワークのパッケージをしています。上箱の内側にはルールサマリーがあり、下箱はダイストレイのように使う事ができるほか、その内側にはホビット庄の地図が描かれています。上箱のサマリーは下の方に余白があり、ちょうど下箱を差し込むスペースが開けたあります。このように箱を組み合わせる事でマスタースクリーンさながらのものとなります。

冊子(ルールブック・資料・アドベンチャー)

冊子はスターターセット用にルールを抜粋して整理している「ルールの書」、ホビット庄の地理を細かく整理している「ホビット庄の書」、スターターセットのルールでホビット庄を遊ぶためのアドベンチャー「冒険の書」があります。なかでも「ホビット庄の書」は一番情報量が多く、TRPGはしなくても指輪物語が好きな人であれば満足できるものとなっています。

  • ルールの書・・・24ページ
  • ホビット庄の書・・・52ページ
  • 冒険の書・・・32ページ

アートワークも素晴らしくホビット庄の冒険感も出ています。

エリアドールとホビット庄の大きなマップ

マップ
スターターセットにはミドルアース北西部にあたるエリアドールの大型マップが入っています。エリアドールはTORで遊ぶ上で主な舞台になっており、ホビット庄がミドルアースのどのあたりに位置するかもすぐにわかります。また、裏面はスターターセットを遊ぶ上で必要なホビット庄のマップになっています。このマップを使って遊ぶ事で、ホビット庄を構成する4つの四が一の庄やバック郷にある地名などに詳しくなる事ができます。

ルーンがテングワール文字が刻まれた専用のダイス

ダイス
スターターセットには12面体のダイスが2個、6面体のダイスが6つ入っています。ダイスはプラスチックですが、面の周囲を縫い付けたようなデザインをしています。で12面体のダイスは判定ダイスで、1~10の値と目およびルーンのアイコンがあります。
目のアイコンはは「サウロンの目」を表しており、この目が出ると判定ダイスの値を0として扱います。ルーンのアイコンは「ガンダルフのルーン」を表しており、難易度に関係なく判定に成功する事ができます。

6面体は技量ダイスで、判定の際にキャラクターが得意としていたり、専用の道具があったりすると判定にその数だけd6を追加する事ができます。また、6の目の部分にはテングワール文字が刻まれており、この目を出して成功することで、技能の成功度を高める事ができます。戦闘に至っては特別な効果を与える事も可能になります。

  • 判定ダイス・・・2個
  • 技量ダイス・・・6個

アートワークのカード

カードはスタンスカードと武具カードの2種類が同梱されています。スタンスカードは片面には戦闘時の4つスタンスが書かれており、セッション時には現在のセッションを手前にしておくと良いでしょう。もう片面には旅をしている時の役割4つが書かれています。スターターセットではエリアドールを移動する事がないため、こちらの面を使うことはありません。(代わりにホビットの散歩というものが行われます。)

武具カードは片面に武具のイラストがあり、裏面には武具の説明とデータが載っています。武具カードがあることでキャラクターシートに書き込まずに遊ぶ事ができます。

  • スタンスカード・・・6枚
  • 武具カード・・・30枚

すぐに遊べるプレロールド・キャラクターシート

スターターセットではアドベンチャーを遊ぶためのプレロールドキャラクターが8枚用意されています。スターターセットではキャラクター作成ルールが掲載されていないため、TORを持っていないのであればこのプレロールドキャラクターで遊ぶことになります。キャラクターはドロゴ・バギンズ、プリムラ・ブランディバック、ロリマック・ブランディバック、パラディン・トゥック2世、エズメラルダ・トゥック、袴帯家のロベリアの6人とスポット的に参加できる2名があります。

ゲームとして

「一つの指輪:指輪物語TRPGスターターセット」はTORのベーシックな部分を使ってホビット庄を巡るアドベンチャー向けに調整されています。そのため、旅ルール(ジャーニー)や会議(カウンシル)といった、指輪物語っぽい要素は基本ルールブック発売までお預けになっています。まずはこのゲームに触れておほしい、入門者向けという観点からはこの選択は間違っておらず、プレロールドキャラクターを使うことでキャラクター作成のルールも覚える必要がありません。まずはキャラクターがどういう能力を持っていて、どう判定して、どう戦うのか、という部分にフォーカスしています。そして、その舞台にはシャイアがピッタリと言えます。

行動の判定は判定ダイス1d12をロールするもので、キャラクターの技量によって追加で技量ダイスd6が増えていきます。判定ダイスは前述の通りで得意とするものであれば技量ダイスを多く振る事ができます。また、希望点をどのように使うかも鍵となっており、希望点を使う前にロールプレイで高揚状態にすることで2個追加できるなど、ロールプレイを推奨するようなシステムもあります。

戦闘はスターターセットでは基本の部分のみを使っています。TORでは戦闘は遠隔攻撃を撃ち合う開幕射撃から始まり、その後から接近戦になって進行します。この時に戦闘時の立ち位置を表すスタンスを取ります。このスタンスはごとに特殊な戦闘行動を取る事が可能で、その行動では味方のバフや相手へのデバフを行う事ができますが、スターターセットでは平和なホビット庄を舞台にしていることもあり、戦術的な戦闘を行うことは考えていないと思われます。なんせ、ホビットたちがキャラクターなのでガツガツ戦闘しているところも想像しにくいでしょう。なにかと複雑になりがちの戦闘ですが、スタンスカードや武具カードを使うことでデータ参照が容易になり、初めて遊ぶ人でもわかりやすいようになっています。

このようにTORのシステムとホビットやホビット庄の理解をするにはスターターセットはとても良くできています。D&Dのハーフリングやソードワールドのグラスランナーなどで冒険に慣れている人からすると、こんなに平和なホビットでまったりと過ごすことができないかもしれませんが、スターターセットを通してホビットを見ることで陽気でゴシップ大好きで食事を1日に6回取るし、なんておもてなしが好きなんだろう、という事がわかります。

「ロード・オヴ・ザ・リング」のサウロンの気配を感じるシリアスな雰囲気を楽しみたいのであれば、基本ルールブックが必要です。こちらではキャラクターが堕落していくことをルール化したシャドウポイントや、活躍がサウロンに認識されるモルドールの目といったルールが採用されています。エルフやドワーフ、ドゥーネダイン、自由の民であるバルドの一党などを作る上でも必要です。そのため、スターターセットでは物足りないと感じる方もいるかもしれません。しかし、TORに触れてルールの大まかな部分を知ることで、基本ルールブックの理解も早まりますし、ミドルアースに平和な場所があるということも理解できるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?スターターセットはいきなり複雑なルールの基本ルールに触れるのではなく導入のハードルを低く設定しているので、TORに興味がある人にはおすすめです。ぜひとも「一つの指輪:指輪物語TRPGスターターセット」で遊んでみましょう!

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