TRPGは実社会のロールプレイに役立つか?

TRPGとはテーブルトーク・ロール・プレイング・ゲームの略ですが、その意味はテーブルを囲んでロールプレイして遊ぶゲームを表しています。ロールプレイがあることで一般的なボードゲームと異なり、さまざまな人物の疑似体験をすることができます。この疑似体験をするロールプレイの経験は実社会のロールプレイどのくらいに役に立つのか、ロールプレイについて解説します。

ロールプレイとは

ロールプレイというとどこかで聞いたことはあるけど正しくはわからない、またドラクエなどのゲームの印象を持つ人も多いでしょう。実際に日本ではロールプレイよりロールプレイング・ゲームという単語が先に広まっています。なんとなく役になり切ることはわかりますが、ロールプレイとは何?目的は?といったところまでは企業研修などで経験していない限りわからない部分があります。

ロールプレイの定義

ロールプレイとは役割(Roll)を演じる(Play)を組み合わせたものであり、疑似体験を行うことを意味しています。実際の企業では現場の仕事に近い環境を体験することでスキルを学習する方法として用いられます。

ロールプレイの目的

企業でロールプレイ研修やロールプレイ学習を行う目的は、従業員の「実践力向上」です。特に接客業ではお客様への接客、クライアントへの営業、採用面接など、座学だけは学ぶことができない人の機微を感じ取る訓練が必要です。まだ企業によっては何もなく実地研修で学ばせることもありますが、ある程度の規模がある企業であれば入社まもない従業員の座学に合わせて行います。

TRPGの経験はロールプレイ学習に役に立つ?

結論から言うと、TRPGのロールプレイの経験は実社会のロールプレイではほぼ役に立ちません。同じように「ロールプレイ」を行うものですが、これは目的が異なるために得られる結果も異なります。企業で行うロールプレイには「実践力向上」を目的としており、より職務に近い疑似体験になりますが、TRPGのロールプレイの場合は架空人物の体験であるため実践力はほぼ得られません。ただ、クトゥルフ神話TRPGのように現代をプレイし、セッションの中に実務を疑似体験できるやりとりが発生するのであれば別です。このように実際のロールプレイには直結しませんが、ロールプレイの学習プロセスの理解と演じる恥ずかしさの克服ができます。また直接ロールプレイとは繋がりませんがコミュニケーション能力も培うことができます

ロールプレイの学習方法

TRPGによる経験はロールプレイ学習のプロセスの理解には役立ちます。ロールプレイ学習にはいくつかのパターンがあり、それぞれTRPGであればどのようなタイプかを当てはめる事ができます。

ケース型ロールプレイング

最も多く実施されるロールプレイングで一般的なものとしてケース型ロールプレイングがあります。このタイプは「特定の場面を想定し、顧客の業種や立場、課題などの細かい条件が設定された状況の中でロールプレイをする」ものです。

TRPGでもあるパターンで、シナリオの方向性や事前のハンドアウトから自分のロールを考えて振る舞います。ただし、TRPGにはキャラクターの性格が行動に反映することもあり、プレイヤー自身は最適解を理解していてもキャラクターの性格で制限を受けて最適解に辿り着けないこともあります。

問題解決型ロールプレイング

実際に発生した、もしくは過去に起きた問題をテーマに実施するロールプレイングです。問題発生時の対応をさまざまな視点から協議し、新たな解決策を見出すことができます。実際の企業で行う場合は過去に失注した商談など、具体的な商談の事例をテーマに問題点を複数人で協議します。このロールプレイにより同様の事案が発生した時に対処できる方法に気づくことができ、新人やスランプになっているベテランなどの視野が狭くなっている状態を解消できる効果があります。

TRPGでは過去の事案を振り返るということはほぼありませんが、タイムリープして過去に戻ったり、未来視をしてこれから起きる災害を回避するといったシナリオで体験することができます。

モデリング型ロールプレイング

このタイプは実際の企業ではトップセールスマンやスキルがある代表者がロールプレイングをおこない、他のメンバーで代表者の真似をするロールプレイングです。全員を同じスタンスに立たせたい場合や、イメージを共有させたい場合に効果的です。

TRPGにおいてはほぼこのタイプでロールプレイすることはありませんが、リプレイ本やリプレイ動画の影響を受けて真似をする人はいるかもしれません。ただ、実際にルールをうまく活用したり、会話で機転を効かすなど上手いロールプレイというのは存在するので、参考にして実践してみるのは良いことです。

グループロールプレイング

グループごとに分かれ、同じテーマでそれぞれの役割を変えながら繰り返し実施するロールプレイングです。実際の企業では全員がそれぞれの立場に立つことができるため、顧客の立場に立って考えることができます。顧客の立場になることで見える問題点もあり、幅広い対応方法を考えることができるようになります。

TRPGでは同じシナリオを使い、様々な人でセッションを行うことがこれに当たります。その場合、収穫があるものはGMであり、特にオリジナルシナリオであればその問題点も見えてくるようになります。

演じる恥ずかしさの克服

自分以外の誰かを演じたりする時、必要以上に恥ずかしさを感じることがあります。これはただの自意識過剰なだけですが、客観的に見た自分とのギャップを受け入れることができない時に恥ずかしさを感じます。TRPGでも克服できずに辞めていく人もいますが、何度かロールプレイを経験することで恥ずかしさが気にならなくなります。慣れてくると敢えて自分とはかけ離れたキャラクターも演じ切ることができます。

フィードバックが重要

実際のロールプレイに限らず、TRPGでもフィードバックがある方が良いです。ロールプレイをする場合、その設定を細かくして演じるところまではよくあるのですが、そのロールプレイがどうだったかについてフィードバックがあまり無いこともあります。適切なフィードバックがあることでロールプレイの振り返りが可能になり、演者のスキルアップにつながります。TRPGの場合は反省会(アフターセッション)を行い、感想戦をすると良いです。この反省会や感想戦をすることでコミュニケーション能力を培っていくことができます。

フィードバックでの注意事項

フィードバックを行う場合、適切なフィードバックを行う必要があります。そのためにはフィードバックを行う項目を考えておくと良いでしょう。態度や会話力、対応力、ニーズの汲み取りはできているかを可視化できるとフィードバックも行い易くなります。ただ、TRPGにおいてフィードバックは楽しむ気持ちを損なわせてまで行う必要はなく、建設的な雰囲気の中で行うと良いでしょう。オリジナルシナリオの場合は多少厳しい意見がある方が改善しやすくなります。フィードバックは絶対的な意見ではありませんが、GMでは持つことが難しい客観的視点で切ってもらうことができます。

良い点は必ず共有する

フィードバックにおいて良かった点は必ず共有した方が良いです。フィードバックは悪い点のあら探しになってしまいがちですが、欠点だけを指摘されても評価対象者はモチベーション落としてしまう可能性もあります。そこで良かった点を共有することでできていない人のロールプレイの参考にもなります。TRPGでもカッコいい言い回しや印象的なロールプレイは共有することで、ロールプレイした人も嬉しくなります。

まとめ

いかがでしたか?TRPGでのロールプレイは実際のロールプレイでは目的が違うため役に立たないことがわかったと思います。ただ、実際のロールプレイの学習プロセスやフィードバック、また恥ずかしさを克服できる点ではTRPGの経験も大きく役に立ちます。また、コミュニケーション能力も培われるので全く役に立たないというものではありません。TRPGの本質はキャラクターになり世界を楽しむ、またはキャラクターを世界に迎え入れてもてなすことにあります。なのでTRPGをやる時は難しいことは考えずに、是非とも自分しかできない役割を演じて楽しみましょう。

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