TRPGシナリオやサプリメントを頒布する際、近年では当たり前のように見かけるようになった「SPLL」という表記。BOOTHの商品ページなどで目にする機会も増えました。しかし、「結局どんな制度なのか」「何をすると必要なのか」を正確に把握している人は意外と多くありません。今回は、TRPG同人活動で重要になっているSPLLについて、改めて整理していきます。
SPLLとは?
SPLLは「スモールパブリッシャーリミテッドライセンス(Small Publisher Limited License)」の略称です。これは、TRPG作品の二次創作物を一定条件のもとで頒布できるようにするライセンス制度で、現在はTRPGライツ事務局によって運用されています。
対象となるのは主に、以下のようなTRPG関連の二次創作物です。
- シナリオ
- サプリメント
- リプレイ
- 追加データ
- ファンブック
SPLLは「著作権を自由化する制度」ではなく、「定められた範囲内で二次創作の有償頒布を認めるガイドライン」と考えると分かりやすいでしょう。
なぜSPLLが作られたのか
TRPG界隈では昔から、ユーザーによるシナリオ制作や追加データ制作が盛んに行われてきました。一方で、有償頒布を行う場合には「著作権的にどこまで許されるのか」が曖昧になりやすく、メーカーごとに対応も異なっていました。そこで整備されたのがSPLLです。
SPLLでは、
- 二次創作活動を認める
- 一定条件で有償頒布を可能にする
- 収益の一部を権利元へ還元する
ことで、ユーザー創作と権利保護の両立を目指しています。
紙と電子でルールが違う
SPLLで特に分かりづらいのが、「紙」と「電子」で扱いが異なる点です。よく話題になるのが、いわゆる「20万円ルール」です。これは、紙媒体の二次創作物において、「製造数×頒布価格」が20万円(税込)未満であれば、ガイドラインに従う限り申請不要で頒布できる仕組みを指しています。
一方で、電子出版物は扱いが異なります。SPLL対象システムでは、有償電子頒布を行う場合、基本的にSPLL申請が必要になります。この部分は特に誤解されやすく、「20万円未満なら全部申請不要」と勘違いされるケースも少なくありません。
| 紙 | 頒布規模による(20万円ルール) |
|---|
| 電子 | 有償かどうか |
|---|
SPLL申請はどれくらい時間がかかる?
SPLL申請は、フォーム送信後すぐに発行されるわけではありません。TRPGライツ事務局による確認後、許諾ロゴや番号が発行される流れとなっています。実際の所要日数は時期によって変動しますが、数日〜1週間程度で届くケースが多いようです。ただし、ゲームマーケット前、コミックマーケット時期、ゴールデンウィーク前後、年末年始など、申請が集中するタイミングではさらに時間がかかる場合があります。
また、申請内容に不備があると確認対応が発生することもあります。そのため、イベント合わせで頒布を予定している場合は、「直前に申請すれば間に合う」と考えず、余裕を持って準備しておくのが安心です。
BOOTHやDLsiteの作品が全部SPLLというわけではない
近年はTRPGシナリオ販売が活発になったことで、BOOTHなどでは「SPLL:E○○○○○」という番号を見かける機会もかなり増えました。そのため、「TRPG作品を販売するなら全部SPLLが必要」と思われることもあります。しかし実際には、無料頒布作品や一次創作TRPG、独自ガイドラインで展開されている作品なども存在しています。また、そもそもSPLL対象外となっているTRPGシステムもあります。
つまり、「BOOTHで販売されているTRPG作品=すべてSPLL申請済み」というわけではありません。まず確認したいのは、「その作品がどのガイドラインで頒布されているか」という点です。
SPLLを取っても“何でも使える”わけではない
ここも重要なポイントです。SPLLを取得していても、自由に公式素材を利用できるわけではありません。以下のような場合は禁止されています。
- ルールブック本文の大量転載
- 公式イラストの流用
- 公式ロゴの無断使用
- 公式作品と誤認されるデザイン
あくまで「二次創作頒布を認める制度」であり、著作権そのものが開放されるわけではない、という点は押さえておきたいところです。
すべてのTRPGがSPLL対応ではない
近年はSPLL番号付き作品を見かける機会が増えたため、「TRPG同人=SPLL必須」という印象を持つ人も増えています。しかし実際には、すべてのTRPGがSPLLを採用しているわけではありません。
作品ごとに独自ガイドラインを採用しているケースもあり、海外TRPGではOGLやSRDといった別ライセンスで展開されている作品も存在しています。たとえば『D&D』系統では、SPLLではなくSRD/OGLベースで二次創作や互換作品文化が広がってきました。
そのため、まず確認したいのは、「その作品がSPLL対象なのか」、「どのガイドラインに従う必要があるのか」、という点です。
まとめ
SPLLは、TRPG二次創作文化を支えるために整備されたライセンス制度です。現在ではBOOTHなどで見かける機会も増え、「TRPG同人では当たり前のもの」という印象も強くなりました。
しかし実際には、紙と電子でルールが異なっていたり、すべての作品がSPLL対象というわけではなかったりと、細かく見ると誤解されやすい部分も少なくありません。海外TRPGでは、OGLやSRDといった別ライセンス文化で展開されている作品も存在しています。
また、SPLLを取得していても、公式素材を自由に利用できるわけではありません。あくまで「一定範囲で二次創作頒布を認める制度」である点は理解しておきたいところです。
TRPGシナリオ文化が広がり続けている今だからこそ、「とりあえず番号を取る」だけではなく、その作品がどのガイドラインで運用されているのかを確認しながら活動していきましょう。
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