
トランプ関税がTRPG業界に与えるかもしれない影響
目次
トランプ関税のTRPGへの影響は?
2025年、ドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任し、早くも世界的な注目を集める政策を次々と打ち出しています。中でも、全輸入品に一律10%、中国製品には最大で100%を超える高関税を課すという方針は、国際貿易に大きな波紋を広げつつあります。このような動きは主に製造業やエネルギー分野への影響が取り沙汰されがちですが、実はアナログゲーム市場、特にテーブルトークRPG(TRPG)の分野にも無視できない影響を及ぼす可能性があります。ダイスやミニチュア、ルールブックなど、多くの関連製品が海外で生産されている現状を踏まえると、今回の関税政策は、趣味の世界にまで静かに影を落とし始めているのです。
TRPG業界の現状とグローバル依存
テーブルトークRPG(TRPG)は、1970年代にアメリカで誕生して以来、現在に至るまで世界中で多くの愛好者に親しまれているジャンルです。デジタルゲームとは異なり、ルールブック、ダイス、マップ、キャラクターシート、ミニチュアといった物理的なツールが多く用いられるのが特徴であり、それらを支える製造・流通の仕組みは、実のところ国際的な供給網に強く依存しています。
TRPGにおける主要な物理製品──たとえばルールブックやシナリオ集などの書籍類は、印刷コストを抑えるために中国や台湾で製造されることが多く、中小規模の出版社にとっては、海外印刷はほぼ標準的な選択肢となっています。また、プレイを彩るミニチュアやダイスセットといったアクセサリ類も、その多くが中国や東南アジアで大量生産されています。とりわけ近年は、Kickstarterなどのクラウドファンディングによって立ち上げられるインディーズ作品が増加しており、それらもコストと品質のバランスを求めてアジア圏での製造を前提とするケースが目立ちます。
このような背景により、TRPG業界は見た目以上にグローバルなサプライチェーンの中に組み込まれており、為替や国際物流、そして貿易政策の影響を受けやすい構造となっています。とりわけ米国市場はTRPG最大の消費国であると同時に、多くの出版社の本拠地でもあるため、アメリカ政府が打ち出す関税政策は、業界全体に直接的な影響を及ぼすリスクをはらんでいます。
また、デジタル化が進む現代においても、TRPGにおける「物を使って遊ぶ」文化は根強く、オンラインセッションやPDF配布が主流になった現在でも、紙の書籍やフィジカルな道具を求めるプレイヤー層は少なくありません。そのため、製品価格の上昇や製造・流通の遅延は、最終的にユーザー体験の質をも左右することになります。
このように、TRPGは一見ローカルで手作り感のある趣味に見えながらも、実際には高度に国際的な構造の上に成り立っており、政治的・経済的な変動によって揺らぎやすい一面を持っているのです。
トランプ関税がTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)業界に及ぼす影響について考えると、主に以下の点が挙げられます。これらは、関税政策が引き起こすコスト上昇やサプライチェーンの変化に基づく推測です。
関税の影響が及ぶ領域は?
トランプ大統領が掲げる高関税政策がテーブルトークRPG(TRPG)業界に与える影響は、さまざまな領域に波及する可能性があります。関税は主に物理的な製品の価格に直結するため、TRPGにおける製造・流通、消費者への影響が最も顕著に現れるでしょう。具体的には、以下のような領域に影響を及ぼすと考えられます。
物理製品の価格上昇
TRPGにおける主要な物理製品──ダイス、ミニチュア、ルールブック、シナリオ集など──の多くは、製造コストを抑えるために海外、特に中国や東南アジアで生産されています。関税が導入されると、これらの製品がアメリカに輸入される際に追加のコストが発生し、その費用が最終的に消費者に転嫁されることになります。例えば、ダイスセットやフィギュア、特製マップなど、物理的なツールを必要とするTRPGのプレイヤーにとって、価格の上昇は大きな負担となります。特にインディーズ製品や小規模なメーカーにとっては、コスト増加が利益を圧迫し、価格競争力を失うリスクがあります。
クラウドファンディングへの影響
近年、TRPG業界ではクラウドファンディングを利用したプロジェクトが急増しています。特にKickstarterなどを利用して、自らのアイデアを具現化し、製品化するインディーズクリエイターが増えており、その多くは製造を中国や東南アジアに依存しています。関税が引き上げられると、これらのクラウドファンディングプロジェクトにおいても製造コストの上昇が避けられません。結果として、支援者に対するリターン(報酬)の価格が上昇し、支援者数が減少する可能性が高まります。特に小規模なプロジェクトは、この影響を強く受けることになります。
物流と配送の遅延
関税の引き上げは、単にコストに影響を与えるだけでなく、物流の複雑化にもつながります。輸入品に対して関税が課されると、税関での手続きが増え、通関に時間がかかることになります。これにより、製品の配送が遅延する可能性があり、TRPGプレイヤーが楽しみにしている新しいゲームやアイテムの到着が遅れることになります。特に日本や欧州など、アメリカ国外への発送を行っている場合、さらに遅延が生じる可能性があるため、国際的なサプライチェーンにも影響を及ぼします。
デジタル市場への影響
物理製品の影響が顕著ですが、デジタル市場にも間接的な影響があります。TRPG業界におけるデジタル化が進む中、PDF版ルールブックやVTTといったオンラインツールなど、デジタルコンテンツの需要は高まっています。しかし、関税の影響で物理製品の価格が上昇すると、消費者の支出意欲が低下し、結果的にデジタル市場に対する需要も鈍化する可能性があります。さらに、物理製品の価格上昇により、消費者が物理アイテムからデジタルコンテンツへの移行を加速させる一方で、インディーズクリエイターがデジタルコンテンツの制作に必要なツールやソフトウェアを高額で購入することが困難になることも考えられます。
新規参入者への障壁
関税政策は、特に新規参入者に対して大きな障壁となる可能性があります。新たにTRPGを始めようとするプレイヤーが、ダイスやルールブックなどの基本的なツールを購入する際、価格の上昇に直面すると、初期投資が増大し、参入のハードルが高くなります。また、新規メーカーにとっても、製造コストの増加はビジネスの立ち上げを難しくし、市場に新しいアイデアやゲームが登場しづらくなる恐れがあります。
長期的な影響
短期的には、価格上昇と配送遅延が顕著ですが、長期的には、TRPG業界全体の構造に変化をもたらす可能性もあります。アメリカ国内での製造へのシフトや、他の低コストな製造拠点への移行が進む一方で、関税によってコストが上昇した分を吸収できる大手企業に対し、小規模な企業やインディーズクリエイターがより厳しい競争にさらされることになります。このような環境変化は、業界のダイナミズムに影響を与え、新しいプレイヤーやアイデアの登場を制約する要因となるでしょう。
関税政策によるTRPG業界の展望
トランプ政権による高関税政策は、TRPG業界に物理製品の価格上昇やクラウドファンディングへの影響を及ぼし、物流の遅延や消費者行動の変化を引き起こしています。しかし、この状況の中で、業界には新たな成長の機会もあります。
まず、物理製品のコスト上昇により、デジタルコンテンツの需要が加速することが予想されます。PDF版ルールブックやオンラインプラットフォーム(VTT)の利用が増え、物理的なアイテムに依存しない新しいプレイスタイルが広がるでしょう。また、クラウドファンディングは引き続き重要な資金調達手段として活躍し、インディーズクリエイターはコミュニティとの密接な関係を築きながら、競争力を保ちます。
製造面では、関税によるコスト増加に対応するため、国内製造やオンデマンド生産へのシフトが進む可能性があります。これにより、地域密着型の製造モデルが強化され、サプライチェーンの柔軟性も高まるでしょう。さらに、コミュニティ主導の活動が重要になり、地域イベントやファンとのつながりが業界の活性化を支える役割を果たします。
総じて、TRPG業界は短期的な課題を乗り越え、デジタル化や新たな製造モデル、ファンとの強固な関係を基盤に成長する方向に進んでいくでしょう。とはいえ、ダイスロールでファンブルだけは出さないで欲しいところです。