TRPGのハンドアウト(HO)とは|今更聞けないGMのための基礎知識

ある程度TRPGをやっているとゲームマスター(GM)の手腕が見えてくることでしょう。上級者ともなれば進行を滞りなく進める技術や想定外のアクションへの対応、軌道修正など上手にプレイヤーを転がし楽しませることもできます。そして上級者ともなればハンドアウトと呼ばれるものを準備しておくことが多いです。今回はGMが用意した方が良いハンドアウト(HO)について解説します。

ハンドアウト(HO)とは

ハンドアウト(HandOut)といっても聞き馴染みのない方が多いかもしれません。ハンドアウトとは一般的には講義や講演で聴衆に配布しておく事前資料のことです。プレゼン資料と似ていますがハンドアウトはプレゼン資料とは異なっており、スクリーンやモニタに映し出して進行時に使うのがプレゼン資料であり、プレゼン資料より多い情報を詰め込んだ印刷物がハンドアウトになります。TRPGにおけるハンドアウトも同様で、プレイを円滑に進めるために事前に配布する資料と言えます。

TRPGの場合、情報のほとんどがGMによる口頭での伝達になります。これはTRPGにおいては醍醐味なのですが、時として状況を複雑にすることがあります。
例えば、下の画像をご覧ください。この画像を口頭で説明できるでしょうか?

ハンドアウト

この新聞の中に冒険のヒントが隠されていた場合、GMはこの新聞について口頭で説明はせずに印刷したものを渡すべできでしょう。それは口頭で表現することが難しいことと、円滑に進行を進めるための資料としてプレイヤーが実際に視覚情報を得ることが重要だからです。たとえGMが饒舌であったとしても、受けてのプレイヤーがそれを聞いただけで感じ取れるものかはわかりません。つまり情報が多い時こそハンドアウトを用意すべきなのです。

TRPGには用意した方が円滑に進むハンドアウトが2つあり、一つは「資料としてのハンドアウト」もう一つは「シナリオのハンドアウト」です。

資料としてのハンドアウト

資料としてのハンドアウトは前述の通り、GMが口頭で伝えない方が良い、もしくは伝えることができない情報量の場合に用意する資料です。TRPGは想像力を膨らませながらプレイするものなので、あまりにも視覚情報が多すぎるのも問題ですが、想像力をさらに掻き立てる視覚情報は大いに活用すべきでしょう。

もし、大きな建物やダンジョンに入ったときに地図や見取り図がなければマッピングが必要と思うかもしれません。しかし、シナリオの進行上プレイヤーが見取り図を入手した(GMが入手させた)場合は、ハンドアウトとして見取り図を渡すことでプレイヤーの思考も良くなります。ここでのポイントは地図や新聞、言葉では形容し難い彫像などキャラクターが入手したもの(情報)を視覚で認識させることにあります。情報量が多いハンドアウトをじっくりと見てもらう事で事件解決の鍵や冒険のヒントに気づいてもらうという「ダイスに頼らない演出」も可能になります

シナリオのハンドアウト

シナリオのハンドアウトとは主に導入部分に用いる資料です。TRPGを始める時はどのように始まるでしょうか?突如目の前に王様がいて「世界を救ってくれ」と頼まれるでしょうか?それとも酒場で居合わせた人間が相談していきなり誘拐事件を解決するでしょうか?このような展開もないとは言えませんが自然な流れではなく、余程心意気を理解しあったGMとプレイヤーたちでなければ難しいでしょう。

GMはプレイヤーが冒険しやすいように導入をコントロールしてやる必要があります。そのコントロールとしてプレイヤーにシナリオハンドアウトを渡し、GMの意図する方へ自然と向くようにします。例えば以下のようなシナリオ冒頭のハンドアウトを用意したとします。

一人目のプレイヤーには次の内容を渡します。

ヘックス村は葡萄の産地として有名で毎年この時期になると「星葡萄祭り」が行われている。この祭りには多くのワイン愛好家が集まるのだが、この地の領主であるプレアデス伯爵も例外ではない。伯爵が選んだワインはその年の主流になると言われており、ヘックス村のワイナリーでは伯爵お墨付きのワインを目指して日夜ワインが製造されている。
有力視されていた村の南部にあるワイナリーのオーナーであるケビンは数日前に暴漢に襲われて重傷を負うということがあった。また従業員が引き抜かれたこともあり、対抗馬であるワイナリーのオーナーであるダンカンの仕業と噂が立ったが証拠はない。ケビンの妻であるパリスはケビンの代わりにワイナリーを切り盛りしようとしているが、ケビンは妻が自分と同じように暴漢に襲われるのではないかと不安に感じ、腕っ節があり信頼できる人物を探しているようだ。

二人目のプレイヤーには次の内容を渡します。ただし、魔法なりポーションなりを持っていない必要があります。

ヘックス村は葡萄の産地として有名で毎年この時期になると「星葡萄祭り」が行われている。この祭りには多くのワイン愛好家が集まるのだが、この地の領主であるプレアデス伯爵も例外ではない。伯爵が選んだワインはその年の主流になると言われており、ヘックス村のワイナリーでは伯爵お墨付きのワインを目指して日夜ワインが製造されている。
あなたは月明かりが綺麗だったので夜に散歩をしていると血まみれで倒れている男性を見つける。回復手段を持たないあなたは応急手当てを施し近くの人に助けを求めた。後日、男性の妻が現れ、男性が感謝を述べたいということで自宅に招待したいと申し出があった。

三人目のプレイヤーには次の内容を渡します。ただし、お金に困っているようなキャラクターが好ましいです。

ヘックス村は葡萄の産地として有名で毎年この時期になると「星葡萄祭り」が行われている。この祭りには多くのワイン愛好家が集まるのだが、この地の領主であるプレアデス伯爵も例外ではない。伯爵が選んだワインはその年の主流になると言われており、ヘックス村のワイナリーでは伯爵お墨付きのワインを目指して日夜ワインが製造されている。
ギャンブルなのか散財なのか、貯蓄もつきかけたあなたは人が多く集まることから何か金策ができるかもと思い村へ来ては見たものの、ワイナリーでの肉体労働以外は求人はなく簡単に稼げそうになかった。途方に暮れるあなたを見た小柄でフードを被った男が近寄ってきて簡単だけど割りのいい仕事を斡旋できるという。

このようにシナリオの導入部分として資料を渡されたプレイヤーはGMが「あなたは最初はこのように行動しなさい」という意図を汲み取るはずです。これは半ば強制的なものですが、ハンドアウトにすることにより詳細な情報と背景が自然な流れでにGMが求めるキャラクターの行動を知らせることができます。もし、GMのあえて意図に反するような振る舞いをするプレイヤーであればその後も他のプレイヤーと協力することは望めませんし、そもそものTRPGに向いていないタイプと言えます。このようにシナリオのハンドアウトは冒頭の部分で期間をかける必要がなく、スムーズにシナリオへ入っていくことができます。

秘匿ハンドアウト

秘匿ハンドアウトはシナリオのハンドアウトの一つであり、他の人には知られてはいけないものです。キャラクター誕生時から持つ秘密であれば、それはキャラクターの行動指針となります。また秘匿ハンドアウトを用いることによって特定のキャラクターに秘密を持たせることで、他のプレイヤーにはわからない行動を取らせることができます。特にPvPシナリオであれば秘匿の中身がプレイヤー同士の衝突へとつながります。

ハンドアウトの必要性

必要性
ハンドアウトをわざわざ作る必要があるのか?と考える人もいるでしょう。GMの表現力とプレイヤー全員の認知能力と共感力が高ければハンドアウトは必要ないでしょう。わざわざ資料を作る手間もGMにとっては負担になり得ます。何度も同じメンバーでプレイするのであればシナリオのハンドアウトは特に必要ないと判断するGMもいるでしょう。また、プレイ中に「こういう資料があったら便利かも」と思ったのであれば、それは次のプレイでハンドアウトとして用意することをお勧めします。

また、プレイ直後にプレイヤーに情報を与えない場合を考えてください。彼らは何をしますか?おそらくGMの望むような行動は取らないでしょう。キャラクターが行動を起こすのは以下の通りです。

  1. 事件や騒動に巻き込まれる(すでに発生している問題の解決)
  2. キャラクターにものすごいメリットがある(欲求を満たす可能性)
  3. キャラクターにものすごいデメリットがある(多大な損を被る可能性)
  4. 義理人情

シナリオのハンドアウトではこの4つのどれかをプレイヤーに感じさせ動機にする必要があります。

まとめ

ハンドアウトはTRPGではプレイを円滑に進めるための資料であり、どの資料を用意するかについては全てGMの裁量です。プレイヤースキルが高くて滞りなく進むのであれば必要ないですし、凝った演出にしたいと思うのであればあった方が良いでしょう。プレイヤーにとってハンドアウト数枚程度であれば別に苦ではありません。キャラクターが知ってるであろう世界の常識などはハンドアウトで渡しておくとプレイヤーにとってもプラスになります。また、何気ない事前情報として渡されていたハンドアウトにヒントが隠されたいたりすればプレイヤーが盛り上がること間違いなしです。GMにとってはひと作業ですが用意しておきたいところですね。

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