TRPG初心者でも知っておきたいダンジョンズ&ドラゴンズの呪文の基礎知識

ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)においてウィザードやクレリックなど魔法を扱うクラスでは呪文という形で効果を具現化します。D&Dでは世界観もあり何かと取り決めが多い呪文ですが、ポイントを抑えればとてもわかりやすくイメージもしやすくなっています。そこでTRPG初心者でもわかるようD&Dの呪文の基礎知識を解説します。

呪文とは何?

D&Dの世界には多元宇宙の万物に魔法エネルギーが数多く存在しており、その魔法エネルギーを形として作り替えたものが呪文です。ウィザードやクレリックなどはそれぞれの方法でこの見えない魔法エネルギー「織」と繋がりを持ち、呪文を通して効果を具現化することができます。またモンスターも同様に独自のつながりを用いて効果を発しています。

ウィザードもクレリックも同じように呪文を使いますが、ウィザードは秘術魔法を使い「織」を操り、クレリックは信仰している神が影響を与えている魔法領域から侵攻魔法として「織」を操ります。このようにアクセスできる魔法の根源のエネルギーが大きく異なるため、単に呪文と言ってもその効果は大きく異なります。

呪文の系統

さまざまな魔法エネルギーを呪文の形で具現化させるのですが、その具現化させる系統を8つの術に分類されています。その8つの分類は「幻術」「召喚術」「死霊術」「心術」「占術」「変成術」「防御術」「力術」です。

  • 幻術 ・・・ 他者の感覚や精神を欺く
  • 召喚術 ・・・ 物体や生物をある場所から別の場所へ運ぶ
  • 死霊術 ・・・ 生と死のエネルギーを操る
  • 心術 ・・・ 他者の心に作用し、行動に影響を与えたり操ったりする
  • 占術 ・・・ 未来や目に見えないもの、遠くの有様などの情報を得る
  • 変成術 ・・・ 生物や物体の性質や形を変える
  • 防御術 ・・・ 魔法のバリアなどで対象を守り、侵入者にダメージを与える
  • 力術 ・・・ 魔法エネルギーを操り、さまざまな効果を作り出す

呪文を扱うには準備が必要

すべての呪文は「準備済み」の状態でなければ発動することできません。「準備」とは心の中ですぐに発動できるようにしておくことを意味します。ウォーロック、バード、ソーサラー、レンジャーなどは修得した呪文はそのまま心に固定され「準備済み」になっていますが、ウィザードやクレリック、ドルイド、パラディン、アーティフィサーはそれぞれの呪文リストの中から使う呪文をリストアップして大休憩の終了時に「準備」しておく必要があります。新しい呪文を準備するには瞑想と学習が必要です。またすでに準備した呪文を他の呪文に変更するには大休憩(最低8時間の長い休憩)が必要です。

準備できる呪文の数はレベルによって変わり、ウィザードであれば知力修正値、クレリックでは判断力修正値を各レベルに加えた数だけ、パラディンは魅力修正値にパラディンレベルの1/2、アーティフィサーは知力修正値にアーティフィサーレベルの1/2を加えた数だけ準備できます。

呪文レベル

全ての呪文には強さを表すレベルがあります。高レベルの魔法であればあるほど効果は大きいですが、術者のレベルが不足している場合は扱うことはできません。
そのレベルは初級呪文のレベル0から始まり、最大でレベル9の呪文が存在します。キャラクターのレベルを上げていくことで使用できる呪文レベルも上がっていきます。

呪文スロット

呪文を準備する上で大切なのが呪文スロットの数です。呪文スロットとは魔法を扱う上で心身にかかる負担(呪文レベル)を処理できる回数で表したもので、キャラクターのレベルが上がれば上がるほどスロットの数や高レベルの呪文を扱えるスロットが増えます。キャラクターが呪文を使う際に呪文レベルと同等、またはそれ以上のスロットを消費することになります。

冒険者のチャンドラーは1レベルの呪文スロットを2つ持つ駆け出しのウィザードです。準備済みの呪文はマジック・ミサイル、シールド、ディテクト・マジック、バーニング・ハンズの4つです。チャンドラーは複数のゴブリンと戦っている冒険者を発見し、遠巻きに援護をしようと考えました。そこで自分のターンで1レベルの呪文スロットを一つ消費してレベル1呪文のマジック・ミサイルを発動!3本の光の矢が現れて3体のゴブリンに見事に貫きました。これで残りの呪文スロットはレベル1が一つになりました。

高レベルでの呪文発動

キャラクターレベルが3になるとレベル2の呪文に対応するレベル2のスロットが1つ使えるようになります。高レベルのスロットで低レベルの呪文を使った場合、呪文効果が強化されます。ただし高レベル版に対応する呪文のみになりますが、呪文で与えるダメージや回復の効果が高なります。

使い放題の初級呪文

呪文スロットがつきた場合、ウィザードも武器を手に近接戦闘をする必要があるか?と言えばそうではありません。呪文にはレベル0の初級呪文が存在し、それは呪文スロットに関係なく使うことができます。また、クラスに就くまでに修練した呪文ということもあり、心に刻まれていることから準備をする必要はありません。

初級呪文には「プレスティディテイション」や「ダンシングライツ」「ライト」のように直接戦闘には関わらないような呪文のほか、能力値判定をアシストする「ガイダンス」、敵にダメージを与える「レイ・オブ・フロスト」や「セイクリッド・フレイム」のような呪文も存在する。初級呪文は全て呪文スロットに装填することではできませんが、ダメージを与えるタイプの初期呪文はキャラクターのレベルが上がることでその威力が増大します。

呪文スロットを必要としない「儀式」

呪文の中には「儀式」を行うことで発動するものがあります。通常1アクションで発動する呪文であっても10分間かけて儀式を行うことによって呪文スロットの消費はありません。特に占術に多いですが、サイレンスなども儀式で発動させることも可能です。ウィザードの場合は呪文書に儀式を行う呪文が書いてあれば行えますが、クレリックやドルイドの場合は儀式を行う呪文を準備しておく必要があります。

呪文を発動させるために知っておくべきこと

呪文の準備
いざ、呪文を発動させようとした時、その呪文はどのくらいの長さで発動するのか?どこまでなら届くのか?発動手順は?効果の持続時間は?目標は?呪文の影響の範囲は?など知っておきたいことは多くあります。D&Dの呪文ではこれらの情報がすぐにわかるように整理してあります。

発動時間

発動時間とは呪文を唱えてどのくらいで発動するかです。D&Dの呪文は漫画のような長い詠唱は必要ではなく、ほとんどの呪文は1ターンで発動します。またボーナスアクションで瞬時に発動するものや、呪文発動後リアクションを用いて効果が現れるもの、継続的な精神集中を必要とするような時間がかかるものがあります。

発動時間説明
アクション自分のターンの1アクションで発動する。
ボーナス・アクション極めて早く発動。ただし自分のターンのボーナスアクションを使う必要あり。
リアクション呪文の効果が何かをトリガーにして瞬時に発動する。
長い発動時間儀式を含む発動までに2ターン以上かかるもので発動までに精神集中を維持する必要がある。ダメージを受けた場合、集中を維持するには耐久力セーブが必要。

長い発動時間の場合は自分のターンでの精神集中が必要ですが、ダメージを受けたり、途中で別の呪文に切り替えたりした場合は集中が切れてしまいます。ただダメージを受けた場合は難易度10での耐久力セーブを成功させることにより精神集中を維持できます。

呪文による射程距離

全ての呪文には射程が存在します。射程とは術者を中心に呪文効果を発動させることができる距離を表しており、呪文毎に異なる射程を持っています。

射程表記対象範囲の説明
自身呪文は術者本人にのみ発現。
自身(半径◯フィート)など自身に()で効果範囲が指定してある場合は、呪文の起点が術者になる。
接触呪文効果は術者が接触できる対象にのみ発現。近接呪文になる。
○フィート術者から○フィート離れたところまで対象にできる。効果範囲がある場合は起点の位置。遠隔呪文になる。

呪文の構成に必要な三つの要素

呪文を発動させる、つまり詠唱に当たる部分には2〜3つの要素が関係します。一つは呪文を唱える「音声要素」、そして織を成すことが必要な時に行う「動作要素」、そしt魔法の根源にアクセスするために必要な触媒としての「物質要素」が必要な場合もあります。

音声要素

ほとんどの呪文が神秘的な言葉を唱える必要があります。言葉は魔法の源ではなく、魔法エネルギーを具現化させるための手段の一つと言えるでしょう。そのため声を発することができない状態や、「サイレンス」の効果範囲内であれば呪文を唱えることはできません。音声要素だけで発動する呪文であれば、両手が塞がっていても呪文を発動することができます。

動作要素

呪文の多くには動作が必要で、音声要素に加えて動作要素で織を成すことで呪文の効果を具現化します。動作要素は様々で指先で空中にサインを書くものや大きく腕を振るものなど、ハンドサインなどが考えられます。D&Dのルールでは呪文でどのような動きをしているかは明記されておらず、プレイヤーの想像を掻き立てるところでしょう。動作要素が必要な呪文の場合、少なくとも一つの手が空いている必要があります

物質要素

呪文には言葉を唱え、動作を加えるだけではなく触媒を用いる必要があるものもあります。その触媒は呪文ごとに違っており、術者は常に持ち歩いておく必要があります。ウィザードは呪文構成要素ポーチを、クレリックであれば聖印を用いることで物質要素を補うことができます。ただ、呪文の物質要素にあるもので価格の表示があるものについてはポーチや聖印で補うことができないため、別途入手しておく必要があります。通常、この物質要素で必要なものは呪文を唱えても消費されませんが、クレリック呪文「リヴィヴィファイ」の物質要素であるダイアモンドのように呪文発動で消費されてしまうものもあります。

持続時間

呪文の効果には全て持続時間があります。それは発動してすぐに消滅するものから数分にわたるもの、術者が精神集中する限り続くもの、破壊されるまでなど様々です。多くの呪文はダメージを与えたり、傷を癒したりとその効果が現れても魔力が残らないため、持続時間は「瞬間」になります。

精神集中で効果を維持する

呪文の中には効果を持続させるのに精神集中を要するものもあります。このタイプの呪文は精神集中が切れると呪文効果が失われます。また精神集中は永遠にできるわけではなく、集中が最大維持できる時間も表記されています。

精神集中の邪魔にならないもの
  • 移動
  • 攻撃
  • 通常の活動
精神集中の様になるもの
  • 別に精神集中が必要な呪文の発動
  • ダメージを受ける
  • 無力状態
  • 死亡

なお精神集中時にダメージを受けた場合は難易度10または受けたダメージのうち大きい方で忍耐力セーブを行う必要があり、失敗すると精神集中は途絶えます。

目標

呪文の発動させ方や射程などがわかると次は「誰に」や「どこに」呪文効果を発動させたいかを決める必要があります。いわゆる目標です。この目標は術者が直線で目視できる必要があります。鏡で反射させた視界や完全に遮断された先(大きな壁の向こう側など)を目標にすることはできません。

効果を及ぼす範囲

一部の呪文には一定の範囲に広がり複数の相手に効果を及ぼすことができます。この効果の範囲を使うことで視界に入らない目標を巻き込むことは可能です。

形状説明
円錐形起点から任意の方向に広がるような範囲。起点は効果範囲に含まれない。
円筒形起点から円に広がり、円がまっすぐ伸びる範囲。起点は効果範囲に含まれない。
球状起点を中心に球体での範囲。起点を効果範囲に含むことが可能。
直線状起点から直線の長さまでまっすぐ伸び、その幅に収まる範囲。起点は効果範囲に含まれない。
立方体起点を面にして立方体を形成した範囲。起点は端になるため効果範囲に含まれない。

起点を呪文の効果範囲内に含むことができるのは「球状」だけです。

呪文に対する回避・抵抗

呪文を唱えるウィッチ
呪文を受ける側はセービングスローに成功することにより、回避または効果を半減させることができます。セービングスローに用いる能力値は呪文によって異なり、難易度は術者の「8+呪文発動能力修正値+習熟ボーナス」になります。

  • ウィザードの呪文発動能力修正値 ・・・ 知力の能力修正値
  • アーティフィサーの呪文発動能力修正値 ・・・ 知力の能力修正値
  • クレリックの呪文発動能力修正値 ・・・ 判断力の能力修正値
  • ドルイドの呪文発動能力修正値 ・・・ 判断力の能力修正値
  • レンジャーの呪文発動能力修正値 ・・・ 判断力の能力修正値
  • ソーサラーの呪文発動能力修正値 ・・・ 魅力の能力修正値
  • ウォーロックの呪文発動能力修正値 ・・・ 魅力の能力修正値
  • パラディンの呪文発動能力修正値 ・・・ 魅力の能力修正値
  • バードの呪文発動能力修正値 ・・・ 魅力の能力修正値

呪文の攻撃ロールとは

敵対するものに対して呪文攻撃を行う場合は攻撃ロールが必要です。攻撃は自分のターンで行われ、攻撃ロールに「呪文発動能力修正値+習熟ボーナス」を加算した値が目標のアーマークラス(AC)以上であれば呪文攻撃はヒットします。

遠隔呪文攻撃

「インフリクト・ウーンズ」のように射程が接触の呪文を除くと、ほとんどの呪文攻撃は遠隔攻撃になります。そのため弓などの遠隔攻撃同様、5フィート以内に敵がいて無力状態でなければ呪文の攻撃ロールに「不利」がつきます。

まとめ

ウィザードやクレリックのほか呪文を使えるクラスは多くあります。ただスターター・セットにもあるように魔法職の基本はウィザードとクレリックです。上手に呪文を使うことができるか、どのような効果を引き出すことができるかを理解することは呪文を使うキャラクターを扱う上でも重要です。射程や発動の構成要素、効果範囲など呪文一つ一つを細かく覚える必要はありませんが、呪文を使うことでどのような行動の幅が広がるかは認識しておくと良いでしょう。

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